ガンダム 月の翅
命令を受けたレクリアのパイロット、ボルトはすぐさま翻し山陰へと向かった。
《あのモビルスーツが逃げ込んだ所か…》
夜、暗闇での目視は盲目に等しく、レーダーをたよりにモビルスーツを探した。それだけでは不十分でありメインモニターの明度とコントラストをあげていた。
レーダー上の熱源と自機のマーカーが重なった。しかし辺りにはそれらしきものは見えず
「辺りにはいない…とすれば上か!」
それらしい影は無い。
「上にいないとすればッ!」
レクリアのメインカメラを下方向へ向けると奈落の底から一つの眼光が迫ってきていた。
「ふんっ!」
速射レールガンを構え引き金に手をかけるとプラズマエネルギーが発生した。
「その程度、騙し討ちにすらならん!」
突如目がくらむ程の光がコックピット内に広がった。ボルトの視覚は完全に麻痺し、レールガンはエネルギー不十分のまま発射された。
ガキィン
レクリアの機体が揺れたかと思うとさらにGがかかり背面から山へ激突した。
ボルトの視覚が回復すると、モニター全面にモビルスーツの影があった。
「だからどうだってんだよ!」
レクリアの左アームをザクの右腕にかけた時
コックピットハッチから異音があった。
「何だ?」
ボルトは確認のためハッチを開けると少女というには大人びた女がいた。少女はボルトの首根っこを掴み一気に引き寄せ
「可憐な機体はあたしが使うね!」
ボルトの巨体をハッチから投げ捨てた。「うわああああああああああぁぁぁぁぁ…………」
「レイ、そっちに余裕はあるか?」トシとザッパは入れるか?という意味だ。
「うーん…ザッパは大変かも!自力で踏ん張れれば話は別だけど」
重力下において身体が固定されないと致命傷を負う確率が高まる。ましてや自力で踏ん張れないとなればなおさらだ。
「トシはそこでザッパを頼む、頃合いを見てまた戻る」リュウはトシとザッパにそこにいるよう告げた。
「よし、もう一機ぶんどるぞ!」
ザクとレクリアは再び戦場へ舞い戻った。ボルトは地上5メートルまで迫った時に体勢を整え、背負っていた小型スラスターを噴かせ一命を取り留めていた。
「どれが欲しい?」
「こいつだな」
パンタはモニター上の一機を指した。それはヒノモトの駆るブレッツェルであった。