ガンダム 月の翅
コックピットの中を凝視するもよくは見えなかったが、見られている事はわかった。少なくともその気配はイメージ通り、声にあった眼光の持ち主だ。
「さてと、いただこうか」
男は銃を突きつけた。
「いいだろう、しかし・・・」
ヒノモトは腰につけたビームサーベルを手に取り構え、鋭い明が灯った。途端、男が発砲しビームサーベルは弾かれた。
「うおおおおおおおお!!!」
ヒノモトは男めがけ電光石火の如く生身の特攻を仕掛けた。
「お前バカか!?撃つぞ!」
「サーベルは2つあるッ!!」
パンタの放った弾丸を見事に焼き落とし、面一直線にサーベルを振り下ろした。
パンタの姿が消え、ビームサーベルは空を斬った。
「二段構えの特攻恐れ入った。けどよ、ここはモビルスーツの上だぜ?」
パンタは隙だらけの背中を思い切り蹴り飛ばし、続く回し蹴りで踵を後頭部に食らわせた。
ヒノモトは一撃目で身体のバランスを崩し二撃目で完全にバランスの回復が不可能になり、そのままブレッツェルから落ちた。いくらブレッツェルがうつ伏せだったとて3メートル以上からの落下である、命は落とさないまでもしばらくは立ち上がれないだろう。
パンタは頭部のハッチからコックピットに入りブレッツェルを再起動させた。
「あのわけのわからない船をいただくとするか」
月が2つあるかと錯覚する程の朧光をを放つ怪しげな小型飛行艇は依然として宙に浮き、残りのインダストリア機を相手にしていた。
「レイは上、パンタは下から行け、私は正面から攻める」
リュウが指示を下すと3機は拡散し、各砲からアラクーダへと迫った。一筋の閃光が走った。
モビルスーツが2機、インディファイン・ギアが3機、アラクーダとアラクネだけで何とかここまで敵数を減らしていた。
「アラクネはまだもつか!?」
「厳しいな」
「なんとかして主砲延長上に集められないか!?」
「……なかなか無茶を言うなぁおい…巻き添えはごめんだぜ?シド!行くぞ!」
2機のアラクネがついに甲板を離れ、羽化した蝶のように夜の中を乱舞した。自由になった事でそれまでの精神的重圧から解放された彼らはハイになっていた。