ガンダム 月の翅
「いや、いい……ん?」パンタは2人がいるであろう辺りで何かが光ったように見え、目を凝らした。
「!!!」
パンタの顔につられ彼らは一斉にポイントの山を見た。戦闘が始まっていた。
少し時間を遡りアラクーダ不時着直後、クロードとレトはそれぞれアラクネに搭乗し、エンジンがあるであろうポイントに向かっていた。途中、一機のモビルスーツが骸となっていた。先ほどの戦闘でやられたのだろう、そう思いながらクロードは山岳へ向かった。山の中腹、洞窟の入り口を視界に捉えた時、一つの影が立ちはだかっていた。
「来いよ…消し炭にしてやる!!」
3機のモビルスーツがアラクーダの元から飛び立ちポイントへと向かっていた、ザクのみパイロットをペイジに変えて。
「まだ残っていたのかよ」ペイジが吐き捨てた。「いや、多分…」
アラクネは2対1でも苦戦を強いられていた。先ほどの戦闘、機体性能を無視したオーバーワークが祟り限界が来ていた。連続的戦闘はすべきではなかったのだ。
《まともに戦う余裕はない》「レト、一発だ、動きを止めるんだ!一瞬でも!」「は、はい!」しかしレトも逃げる事で精一杯である、まともに操った事のないモノで狙いを付けるなんて。
「メインカメラだ!目を狙え!」視覚のメインをつぶせば一瞬でも隙を作れる、レトは敵機のガスマスクのような頭部に狙いを何とか絞りレイザーを放った。
レイザーは直撃、その隙を縫ってクロードは一気に加速をかけ敵機をくぐり洞窟入り口に到達した。八本の脚と右ドリルを頑僻に突き刺し機体を安定させ、洞窟へ降り立った。
敵機が張り付いたアラクネを剥がしに向かう、その時
「待って!」
「!?」・・・・・なんだ…こいつは
トシが振り返ると敵がコックピットから生身を露にして白旗を掲げていた。
「今だけは…今だけは見逃してください…!」
いくら女とはいえ相手はインダストリアだ、生身とはいえ…唇に血が滲む。
「命乞いだぁ…?ふざけるなよぉ!!」
「トシ待て!!」
ザッパの声が鼓膜を貫いた。トシは反射的に引き金から指を離した。3機のモビルスーツが到着していた。
「やれやれ、待ちわびたぞ」