ガンダム 月の翅
アキラとアラウダは非常事態の時のために一室に隠れていた。
「大丈夫なの!?」「何もなけりゃね」
やがて振動があった、アドネスクが動き出したようだ。
「どこに向かって…」「地下でしょ」アラウダの顔は緊張で引き締まり端正な顔立ちを一層際立たせた。
「随分まじめだね」「しぃっ、当たり前でしょ」
身に危険が及ぶかもしれないのだ、アラウダも呑気にはしていられない。
「おわぁっ!」
アドネスクが傾斜を下ったのだろう、部屋全体が傾いたおかげでアキラはバランスを崩しアラウダに馬乗りの形になった。
アドネスクが地中へ潜る様子をはるか上空から見ていた者がいた。
「こちらカント、彼らの物とみられる船が再び地中へ潜りました。引き続き様子を」『いや後を追え見つからずに』「了解」
アドネスクが目的地に着き、メイがアラウダとアキラを呼び出しに向かう
「着いたよ、ってアンタら……行くよ!」彼らはあの態勢のまま硬直していた。
防具服に連れ出されるとそこにはコロニーが広がっていた。コロニーには太陽の光が差し込み地下とは思えないほど明るかった。地面に埋め込まれた皿から太陽光を取り込み地中へと送り込んでいた。お陰でコロニーの人々は太陽の恩恵を授かることができる。
コロニーへ足を踏み入れると水先案内人の3人は防具服を脱ぎ自らをさらけ出した。防具服越しではわからなかったが年端も行かない少年2人と少女であった。
「先ほどはご無礼を…私たちは永い間あなた方を待っていたというのに…」
少女たちに先導されながら街並みを眺めると土の壁に覆われた建築物の中に機械仕掛けの片鱗が垣間見えた。原始的かつ電子的なその有様はどこかスリチュアンで感じたものに近かった。
「………長い間?」
メイは少女の背後を歩いていた。
「私たちは上古より伝わる理想郷へ赴くため微かな手懸りを頼りに住処をこちらに移しました。」
「砂漠化のせいじゃないんですか?」いつの間にかアキラも先導者に追いついていた。
「それだけならば場所を移せば済むことです。」少女の声色に変化はなかった。
「理想郷ねぇ~」メイの目線ははるか遠くを見通していた。
「そこは魂の安らぐ場所とされ、現世と来世の狭間にあり、はるか地下深くにあると言われています。」