ガンダム 月の翅
「ジブラルタル?地下から??」
「我々はかつてチベット全域にわたって生活しておりました。しかし、百五十年ほど前に争い、内戦が起こりましてな・・・ここから追い出しはしたものの、彼方の地で我々のように国を築き、そこから水面下で泥沼の戦いが始まったのです。いつの間にか一世紀以上の時が経ってしまいました」
一族の長であろう男が語った。男はその場にいる誰よりも、というより唯一、年老いていた。
「そして今、我々には迎えが来た…今宵がその『時』なのです、バイストン・ウェルへゆく時が来た」
「ちょっと待ってよ!なんでジブラルタルからバイストン・ウェルになるの!」
「私たちは一世紀以上にわたる戦いを続けておりました。」少女がメイを制するように口を開けた。
「3年前のことです。私たちは皆、同じ夢を見たんです」
「どんな?」アキラだ。
「その夢は、その夢の中では、私は不思議なところにいました。辺りは暗く、体が常に浮いているような、漂っているような感覚の中、黄金の光が遥か前方から迫ってきました。そして、その光に包まれた時に・・・『いずれ迎えにゆきます』とのお告げがありました。」
少女の説明はかなり大雑把ではあるが、これ以上詳しくもできなかった。そのおかげでメイ達にもイメージの共有はしやすかったのだが肝心なところはそこではない。
「それは戦いをするなってことで、バイストン・ウェルとは関係ないんじゃ」アラウダが指摘した。
「言い伝えによれば、オーラロードは命のやりとりをしているときに最も開かれると言われています。人の闘争本能がオーラロードを開くのです。」
こじつけではないか?そう思っても彼らは長く積み重ねてここまで来ているのだ。今更とやかく言ったところで止められはしない。
「メイさん、アラウダさん、よろしいですね?」シルルが二人の目を交互に捉え諭すように言った。
「仕方ないか」「行きましょう!」
メイはやれやれといった拍子だがアラウダは気合を入れた。
突然、マニが後方を睨みつけた。
「どうしたんですか?」「・・・・・」アキラには何も返さずにその方へ数歩歩むと
「お前も来るか?お前の情報はインダストリアにも届くんだろう?貴様ら一国が理想郷にまでも手を伸ばすなら・・・それはこの世の理を犯すことになる!これがどのような因果と成るか・・・・知りたければついてくるがいい!」声の先にはカントがいた。言い終わると向き直り「ゆきましょう」と言った。「えぇ!?いいんですかぁ!?」アキラが慌てる中シルルはマニを視ていた。
『面白いじゃないか続けなさい』「しかしそれでは挑発にのったようなものでは」『招待されたのだろう?行かねば失礼に当たらないかな?』癪に障る言い方だ、カントは沈黙を貫いた。
『心配はない、ジブラルタルには最新機体を向かわせる。お前は中から壊せばいい』