ガンダム 月の翅
カントは引き続き任務の遂行を決めると両手を挙げ、白旗の意を表して彼らの前に名乗り出た。
「私はカント!争う気はない!が、これより私の任務をインダストリアによる監察へと切り替えさせていただく!」
カントの声が静寂を生んだ。
「ついてこい」マニは口元を微かに曲げた。
メイは持っていた銃を突きつけた。
「少しでも変なことしたらコレだからね」
「えっ!?」
レプリだ。彼女は今、マオ、ナユタと共にいた。彼らの面倒を見ながらカントにリンクをかけていた。
「???」マオはレプリをまじまじと見つめた。マオの視線に気づいたレプリは『大丈夫だよ』と取り繕うとナユタに
「クロードさん呼んできてくれる?」と頼んだ。
しかしナユタが連れてきたのはアベニールだった。
「クロード君は手が離せないみたいでね、私でよければ話を聞くよ。」
レプリは一息つくとリンクして得た情報を話した。
「カントが裏切るかもしれない・・・と」
「断言はできないけど…それに、カントがそう言ってから急にリンクできなくなった。なんていうか、ジャミングがかけられて…」
アベニールはしばらく考え込み
「そこにいる誰かがバイストン・ウェルの干渉を受けている…とかね」
と一先ずの結論を出した。
「ジブラルタルへ急いだ方がいいかもしれないね」と言い残しアベニールは部屋を出て行った。
アドネスクは大型地底艦に収納され遥か地下深くを西へ進んでいた。その地底艦も独特な形をしており、左右に二つずつ、計4つの輪が付いていた。
「これは私たちの住む地底都の近くで発掘された乗り物を改良したものです。」
先ほどまで姪たちを案内していた少女、セナは地底艦のメインブリッジでさらに説明を続けた。
「この四つの輪は何のためにあるのかわかりませんが、おそらく法輪を模したものではないかと思われ、この船は神々の下へ行くために作られたと私たちは見ています。」
「ホーリン・・・?」アキラが聞いた途端、船体を浮遊感が包んだ。船はもう一人の案内役の少年セルムが操縦しており、スラスターを噴かせ、船体をホバリング状態にした。目の前、そして足元の暗闇により一層深い闇が、虚空が広がっていた。