ガンダム 月の翅
その穴はモビルスーツが一体入る程度の広さがあった。アルサザーが降り立つとその重みに応える様に底が下がっていき、底に着くと辺りが明るくなった。
「地下施設か…」
フィリアスは施設に人の気配がないことを確認し、アルサザーを降りて詮索を開始した。
「こちらフィリアス、アルサザーの信号を辿ってくれ」
一方的な通信を入れ更に奥へ進むと、重い扉がポッカリと口を開けていた。
扉をくぐると施設の中枢であろう部屋があった。部屋には二つの空のガラスの円柱が離れてあり、その間の床には蓋が三つ並んでいた。フィリアスが一番真ん中の蓋のグリップを掴み引き抜こうとすると空中に3Dホログラム状のタブレットが現れた。
「パスワードか…」
腰から小型ビームサーベルを取り出し、出力を最大限にして蓋に突き刺した。空気が中に入ると蓋が上昇しガラスの円柱が姿を現した。
円柱の中には人間がいた。男とも女とも区別のつきづらい風貌であった。しばらく眠っていたようだが、目を開けフィリアスを見ると、口を開け、目を見開き、手を伸ばし、掴むような仕草をした。
フィリアスは『少し下がれ』と合図し、サーベルで円柱の側面を削り取り、人間大の穴をあけた。
中から血色の液体が流れだし、柱の中の人間が外へと足を一歩踏み出した。
脚が崩壊した
そのまま崩れ落ち肉塊となった。
フィリアスは茫然と肉塊を見つめていたが、突然寒気が押し寄せた、胃液がこみ上げた。嗚咽が止まらなかった。
ヴンッ
円柱の前方にホログラム映像が現れ、画面には女性が映っていた。カプセルが開くと作動するようになっていたようだ。
『おはようございます。体の調子はいかがですか?』そう尋ねるや否や彼女は眉をひそめ怪訝な表情になった。
『あなたは …ナンバーはいくつですか?』
「…ナンバー…?あんたは?」
『アンナです。まだ目覚めて間もないあなたのサポートをいたします。あなたの個体ナンバーはカプセルに刻印されています』
フィリアスがナンバーを探している間、アンナは他のモニターに目を移し、何やら指示を送っていた。
「しばらくそこでお待ちください」
と言うと通信が切れた。
フィリアスが一刻も早くその場を離れようとした時、手元のアラームが鳴った。ズゥンっと重い音がし、施設全体が震えた。