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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~道しるべの星~

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「憎むな。そなたの美しい顔が憎しみにゆがむのを見るのはつらい。
そなたは亜遊羅をそれは大事にしておった。妹を慈しむそなたはそれは美しい姿だった。その姿を今一度、私は見たいと思う」
静かに天青が語る。
「それからひとつ、そなたは知るべきことがある。緋影の想いだ。
あれはそなたを愛しておる。ひとつの愛に目を奪われるでなく別の愛にも目を向けよ。
誰よりもそなたを愛しておる。ちとゆがんでおるがそれもまた愛すると言うこと。何ゆえ、あの日、緋影がそなたに短刀を渡したか考えてみるがいい。そなたが亜遊羅を殺したいと願う気持を叶えさそうとしたがゆえなのだ」
亜由美は静かに頷いて天青の言葉に同意する。
もう声はでない。力を使い果たしたために。
迦遊羅が近づいてひざまづくと沙羅耶の手を取って両手で包み込む。
「私も同じような体験をしました。この当麻に恋をし、失恋しました。でも、緋影さんが沙羅耶さんを想っていたように私にも想ってくれた人がいました。私はその人と今は幸せに暮らしています。
愛する人に愛されないことほどつらいことはありません。けれど、そのつらさを知っているからこそ、別の愛を受け入れられるのではないでしょうか? 緋影さんの想い受け入れて見ませんか?」
沙羅耶の涙がぽとり、と迦遊羅の手のひらに落ちる。
「わしは認めぬぞ。我らが苦しみ、味あわせずにいられるか。地獄の炎に焼き尽されるがいい」
冬玄が呪文を発すると炎の玉を当麻達にめがけて繰り出す。
亜由美はぎゅっと当麻に回した手に力をこめる。逃げる時間はない。
迦遊羅が錫杖を構える。が、それよりも早くその前に緋影が立ちはだかった。
そのまま炎の玉を身に受ける。
緋影は手を振って炎の玉を返す。
「朱雀の私に操れぬ炎はない」
ぎゃぁ、と冬玄が悲鳴を上げた。
亜由美は当麻の元を飛び出すと冬玄の元へ駆け寄る。
よって必死に手をかざす。
燃え盛る冬玄の火を消そうとする。
「お前の施しなどうけぬわっ。この身が滅ぼうとも私はお前を長だとは認めぬっ」
亜由美は首を振る。涙が飛び散る。自分の力で何も出来ないと悟った亜由美は自分の手で炎を消そうと火の中に手を突っ込む。
亜由美は悲しかった。仲間内で憎しみあい、苦しめあい、傷つけあうのは見たくなかった。
何よりも自分の存在がそれをなさしめていることに胸が張り裂けそうだった。
涙をぼろぼろこぼしながら亜由美はついに冬玄の体を抱きしめた。
こんしんの力をふりしぼって冬玄の体に巻きつく業火を自分の身に乗り移ろうとさせる。
だが、炎は意志を持っているかの如く冬玄の身をつつむ。
炎に焼かれながら冬玄は馬鹿な、と言って絶句した。
このなんの力もない人間が憎んで殺そうとした人間を命をかけて守ろうとする姿に驚いた。
冬玄は必死に亜由美を引き剥がそうと動く。が、亜由美は頑として動かない。
ふいに炎が消えた。天青が消したのだ。
亜由美はずるずると座りこむ。
「あのまま炎に包まれていてはお前は死ぬところだったのだぞ?」
その言葉に亜由美は激しく首を振る。
私は死なない、と強く言っている様だった。
一体どこからそのような確信が出るのか冬玄には不思議だった。
「それがその子が長に選ばれた印だ」
天青が近づいて亜由美は安心したかのような視線を向けて微笑む。
天青が亜由美の腕を掴んで支える。
「力の有無で長は選ばれたのではない。純な無垢なる心を持っている亜遊羅だから選ばれたのだ。愚かであることこそがその条件なのだ。気のふれたような所行にも心があることは私もお前も知っていると思うが? その心に抱いた闇を手放せ」
天青が冬玄を見つめて言う。
「お前に何がわかる?! お前は巫女姫にも亜遊羅にも愛され、その二人をかばって死んだ。死んだお前には咎がなかったが、何もしていな私は警護を怠ったというだけでこのざまだ。
永遠の闇に閉ざされて生きる事がどれほどの事かわかるか? 愛するものにも見放された俺の心は闇に支配された。どれほど、一族を恨んだか。一族が滅んでせいせいしたぐらいだ。
それなのに亜遊羅が転生した。それをこの闇の中で知ったとき憎しみがよみがえった。
だから私はこの闇の力を使ってあらゆる闇の力を溜め込んだ。巫女姫や緋影をあおったのは私だよ。いつか同じ苦しみを味あわすために私はやつらを利用した。お前に俺の苦しみなどわかるまいっ?!」
激しく冬玄は言う。
ああ、と天青は答える。
「わからぬよ。だが、闇に染まったお前を見て悲しむ人間がいないと思ったら大間違いだ。現にこの亜遊羅は涙を流していたではないか。ほとんど面識もないお前のために身を呈した。
愛されていないなどと思うのは早計過ぎぬか? この咎が終ればまた現世に産まれることも叶おうものよ」
「いつ咎が許されると?」
吐き捨てる様に冬玄が言う。
亜由美はその冬玄に手をかけてじっと見つめる。
はん、と冬玄は鼻で笑った。
「真の覚醒もしていないお前にこの私の闇に成すすべもあるまいに。この俺でさえ、扱うのがやっとなのだ。それでなくともお前の力はもうないと言うのに」
亜由美は激しく首を振る。その両目からは涙が流れる。
自分は彼らを救うすべを知らない。けれど、なんとかして彼らを救いたい。
許す、などとえらそうなことは言えない。ただ、彼らを巡り巡る生の円環に戻してやりたかった。亜由美の中に思いがあふれる。
"手放して"
亜由美は口を動かす。
何度もそれだけを言う。
"闇を手放して"
そうすればまだ何かできるかもしれない。
必死に訴えかける亜由美の姿に冬玄はあきらめたようなため息をもらした。亜由美のあまりにもばかばかしい所行に毒気を抜かれてしまった。
「お前など憎んでも面白くない。いいさ。この闇を好きにするがいい」
冬玄の体から闇が抜け出す。
闇がうごめく。
亜由美は冬玄から離れると今度は寄り添っている沙羅耶と緋影の元に向かって同じ事を繰り返す。
二人は頷くと闇を手放す。
そしてまた白影の元に向かって同じ事を要求する。
「兄じゃ」
と白影が緋影を見つめる。兄の緋影が頷いたのを見て白影も闇を手放す。
四人の抱えた闇が融合しする。
よどんだ禍禍しい気配に亜由美の顔におびえた表情が浮かぶ。
あまりにも強い自分への憎しみが亜由美の心に突き刺さる。
天青が亜由美を後ろから抱きしめて支える。
「亜遊羅・・・、いや、あゆだったな。そなたの名は。恐れるな、とは言わぬ。恐れを受け入れるのだ。自らの醜い心から生じたものすべてを受け入れるのだ」
天青の言葉に亜由美は躊躇する。
昔、自分は魔を受け入れた。また同じ事にならないのか?
亜由美はその可能性に怯える。
大丈夫だ、と天青が答える。
「あゆは当麻が守る。そう約束しておるのだろう? 当麻を信じるのだ。当麻はここにおる。今は眠っているだけだ。大丈夫だ」
優しく天青いが言い聞かせる。
亜由美は小さく頷いて自分の恐れを受け入れる。怖いというのを受けれいてしまうと不思議と心がないでくる。
それからどうすればいいのかと天青を振り仰ぐ。
「あの闇の心を受け入れるのだ。自分の心を受けれたのと同じようにあの心も受け入れてやるのだ。拒否するのではなく、憎しみを肯定するのだ。そこから先は思うがままに動くがいい。