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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~道しるべの星おまけ~

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もし、亜由美が休んでいるならちょうど昼食を食べている時間だ。
きっとお気に入りのテレビ番組を見ながら食べているはずだ。
そっと当麻は階段を降りてテレビのある洋間に向かう。
途中、ダイニングテーブルの上の弁当が自分の分いがないことを確認する。
洋間に近づいて亜由美の楽しそうな笑い声を聞いて動きを止めた。
ほっとすると同時に切なくなる。
自分はどれほど亜由美を守りきれるのか最近自分の力に不安があった。
自分はもう鎧をまとっていない。鎧の力が自分にまだ残っているのは気付いていたがそれで亜由美を守る
ことは出来ない。
戦う力が欲しいとは思わなかったが、守る力が欲しいと切実に当麻は願っていた。
しばし、亜由美の笑い声に耳を澄ます。
楽しげな笑いが聞こえるたびに守ってやりたいという思いがあふれる。
壁に背を預けて考え込む。
ずるずるとまた床に座りこんでしまう。
人の動く気配に当麻ははっと我に返った。
視線を動かすと横に亜由美が立ち尽くしていた。食べていた弁当箱をダイニングルームに戻そうとしてい
たのだろう。
手に弁当箱を持っている。
亜由美が口を開きかけたのを手で制する。
「悪い。邪魔する気はなかった。ちょっと考え事をしていただけだ。俺も弁当を食うか」
言って当麻はダイニングルームに向かう。
弁当を温めることもなく冷たいままで口に運ぶ。
あまり食べたくはなかったが、食べないとまた皆に心配をかける。
特に今の亜由美に心配をかけさせたくはない。
無理やり弁当の中身を喉に流し込む。
当麻、と消え入るような声で名を呼ばれる。
ばっと当麻は振り向く。
傷、と亜由美は言う。
当麻は微笑んで答えてやる。
「どうもない。お前が助けてくれたおかげでこの通りぴんぴんしている。ありがとな。お前のほうこそ大
丈夫か?」
亜由美はこくんと小さく頷く。
「だったらいい。ただ、自分の体は大事にしろよ。ちゃんと休めよ」
当麻の言葉に亜由美は泣きそうな顔をする。
当麻は飛んでいって抱きしめてやりたいのをぐっとこらえる。
「悪いが、俺の前で今泣かれると困るんだ。抱きしめてやれないから。だから、他の人間の前で泣いてく
れ」
冷たい言葉だと自分でも思った。だが、そうでもなければ自分はきっと抱きしめてしまうだろうからそう
言うしかなかった。
ひどく亜由美と自分の間に溝が入った気がした。それはどんどん深くなる気がして当麻は怖くなる。
当麻はそんな気持を振り切る様に亜由美に背を向けると弁当をかっ込む。
ばたばたと食べ終えて流し台に弁当箱を放りこんで当麻は足早に自分の部屋に駆け込んだ。
ベッドに顔をうずめながら当麻は呟く。
「人の心配する前に自分の心配しろよ」

亜由美は立ち尽くしていた。
冗談のような気持で近づくなと言ったがこれほどまでに当麻が気を使っているのを見ると正直心が痛い。
何よりも自分を案じてくれる気持が切ない。
仲直り、しよう。
亜由美は心に決めた。
部屋の前に来て躊躇する。
部屋の中は静かだ。
眠っているのだろうか?
惑っているとドアが開く。
お前、と当麻が驚いたような声を出す。人の気配に思わずドアを開けたが本当に亜由美がいるとは思わな
かった。
「なんだ? どっかしんどのか?」
相変わらず気遣う当麻の言葉に亜由美は涙がこみあげてくるがあえてこらえる。
ごめん、とだけ小さく言って身を翻す。
たんま、と当麻は言って亜由美の腕を掴んだ。
くるり、と体の向きを変えさせられる。
「なんでお前が謝るんだ? 謝るのは俺のほうだろうが?」
ひどく不機嫌な声で言われて亜由美の表情は暗くなる。
ああ、もう、と当麻は声を上げると亜由美を抱きしめた。
「そういう顔をするなよ。がまんできなくてとうとう抱きしめてしまったろう?
悪いのは俺だろうが。押し倒した俺が悪いの。お前は何も悪くない。いいな? わかったか?」
ほんの少し離して当麻が言い聞かす。
仲直り、と亜由美は言う。
「仲直りも何も別に喧嘩してるわけじゃないだろう? お前だってあれは罰ゲームのつもりで言ったん
だろうが。
自分で撃沈してどうする? ジョークはあくまでもジョークで着き通せよ」
ふぇ、と亜由美は声を上げる。
「ああ、思い存分泣け。今は俺しかいないから。なんでも言え。文句だろうがなんだって聞いてやるから」
当麻が優しく亜由美を抱きしめる。
亜由美は何故こんなに泣きたいのかもわからずにただ涙を流した。
二人は廊下の床に座りこんで抱き合っていた。
亜由美は当麻の胸に頭を預けてほけていた。
なんで、と言う。
「なんで泣きたくなったのかな? 自分でもわかんない」
疲れているんだろ、と当麻が指摘する。
「疲れていて感情が不安定なんだ。お前、今回も思いっきり突っ走ったからな。
体が休ませてくれって言ってるんだ。しばらく学校休んで休んでろ」
いや、と亜由美は小さく言って抵抗する。
「当麻が連れ去られて怖かった。もう当麻が側にいないのはいや。怖いのはいや」
小さく呟く亜由美を当麻はやさしくあやす。
「お前がそばにいろと言うなら学校だってなんだって休んで側にいてやるから。
せめてその手首の傷が治るまでは休んでてくれ。自分の力で直せないほど力がないんだろう?」
相変わらず目ざとい当麻の観察力に亜由美は脱帽する。
「細かいこと気にしないでよ。言われてることは否定しないけど。でも、間違っても自殺未遂したとかじ
ゃないからね」
わかってる、と当麻は答える。
「何をしたかはわからんが、俺が刺されたときに作った傷だろう? あの後に出来ていたからな。
ともかくしばらく休め。でないと俺の心臓がもたん」
ん、と亜由美は納得して当麻に体の体重を預ける。
当麻の温かい腕の中にいると安心して亜由美はとろん、とまぶたを降ろしては開けるという動作を繰り返
す。
急に体重を預けられて亜由美が眠いのに気付いた当麻が慌てて起こす。
「ここで寝るな。風邪ひくだろうがっ。部屋で寝ろ」
やだ、と亜由美は当麻にしがみつく。
「当麻と一緒に寝るの」
小さな子供のような声で当麻に甘える亜由美に当麻は苦笑いをする。
「俺に押し倒されてもいいって言うのか?」
「だって、ここには伸も征士もかゆもナスティもいないもん。とーまといっしょにおねむするのー」
「誰かが帰っていてこの場面を見たらまた俺が怒られるんだぞ?」
「いいの・・・。今度は・・・私がくっついたって・・・言うから」
「ちょっと待ってろ」
亜由美の意識が半分飛んでいることに気付いた当麻は慌てて亜由美を廊下の壁にもたれかけさせると自
分の部屋に行って毛布を持ってくる。
それを肩にひっかけながら亜由美を抱き上げてリビングルームへ急ぐ。
リビングルームの窓からは暖かい晩夏の日差しが入っていて暑いぐらいだ。エアコンのリモコンを口にく
わえる。
すくなくとも部屋に呼びこんでいるわけではないから少しはお目こぼししてもらえるだろう。
当麻はそう考えてほとんど夢うつつをさまよっている亜由美を横たえると頭の下にクッションを引いて
やってまくらにしてやる。
それから毛布をかけて今度はエアコンの調節をする。
「とうまー」
と名を呼ばれ当麻は苦笑いを浮かべて亜由美を見る。
「いっしょにおねむなのー」