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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~道しるべの星おまけ~

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とろんとした瞳で亜由美が当麻を呼ぶ。
「一緒に叱られたって知らないからな」
当麻はそういって一緒に毛布にもぐりこむ。
亜由美は当麻に身をすりよせると深い眠りに落ちていった。
当麻はそれを見届けてからまぶたを閉じる。
ゆっくりと安堵の気持が体中にひたひたと押し寄せる。
自分が安堵できるのは亜由美の側なのだと再確認しながら当麻も夢の中に落ちていった。

「当麻ー。あゆー」
名を呼ばれて当麻は眠そうにまぶたを開けた。
伸の顔が逆さまに眼に入る。
「お帰り」
当麻は言って体を起こす。
体を丸めて亜由美は傍らでまだ眠っている。
「寝るのはいいんだけどね。エアコンつけて毛布に包まって眠るなんてことしないでくれるかい?
電気代がかさむんだよ」
伸がため息をついて言う。
悪い、と当麻は素直に謝る。
「こいつが急に一緒に寝ると言い出して眠っちまったもんだから毛布もってここに来るしかなかったん
だ。
夏用のタオルケットを探す時間がなかった」
言って当麻は苦笑いする。
とうまー、と亜由美が寝言を言う。
はいはい、わかったと当麻は答えて横になると亜由美の肩を抱いてやる。安心したかのように亜由美はま
た深い眠りに落ちていく。
「もうしばらく寝かせてやってくれ」
当麻が頼み込むと伸は頷く。
「いいよ。あゆも当麻も疲れてるだろうしね。征士達が帰ってくる頃にまた起こしに来るよ」
サンキュ、と当麻が礼を言う。
あーあ、と伸が残念そうに言う。
何なんだ?、と当麻が目で問い返す。
「もう少し、喧嘩してると思ったんだけどなー。1000円負けた」
おい、と当麻が声を出す。
「それは何か? 俺達がいつ仲直りするか賭けていたのか?」
うん、と伸は頷く。
「僕は三日、征士は一日」
「って今日は二日目でドローだろう?」
「間とって二日にナスティとかゆが賭けたんだ」
なんでナスティまでが・・・。
当麻は呟く。
「暇つぶしだろう?」
「暇つぶしに変な賭けをしないでくれ」
当麻が苦笑いする。
「大体、ナスティだって怒っていたんじゃないのか? 俺が近づくの散々妨害していたくせに」
「それはそれこれはこれ。僕だっていちゃつくカップルが減るのは歓迎だけどね。
どうも、しっくりこないんだよ」
伸が困った様にため息をつく。
「何がしっくり来ないんだ?」
「当麻とあゆが一日一回はくっついていないと変な感じがするんだよね。もう我が家の名物風景だから」
「頼むから観光案内とかしないでくれよ」
「あちらに見えますのが当麻とあゆのいちゃつき風景です、ってかい? なかなかおもしろね」
伸が面白がって言う。
「それだけはやめてくれ。あゆに殺される」
嫌そうに当麻が頼む。
オーケー、と伸は答えて立ちあがった。
「しばらくゆっくりしてたらいいよ」
伸の寛大な許可の元、当麻はまた亜由美と二人きりの時間を過ごした。

「あゆー。起きろっ。めしだぞっ」
当麻にゆさゆさと揺さぶられて亜由美はぼけーっと起きあがった。
眠そうに目を薄く開いて当麻の姿を確認する。
「ふにゅー。とうまー」
亜由美は寝ぼけたままで当麻に抱きつく。
寝ぼけて抱きつく癖は自分だけでないことに当麻はいささか安堵しながら亜由美を引き剥がす。
そしてチユっと唇を重ねる。
亜由美の目がぱちりと開く。
「ちょっ・・・す」
すけべっ、と亜由美が手を振り上げるまでに当麻は亜由美の頭をこつんと小突くいてばーか、と言う。
「誰もいない。人前でしたらぶちぎれるだろうが」
そっか、と亜由美は納得して手がはたり、と落ちる。
「夕飯食ったら、風呂入って寝ろよ」
当麻が立ちあがって亜由美も慌てて立ちあがる。
ダイニングルームへ急ぎながら亜由美は問う。
「今日のお風呂男の子から先じゃなかったの?」
「病人、最優先」
短く当麻が答える。
「病人じゃないってば」
「だったら怪我人」
こんな浅い傷をつかまえて怪我人もないだろうに、とひとりごちるている間にダイニングルームへつく。
二人一緒の所を見た迦遊羅とナスティがにんまりする。
征士は面白くなさそうな顔をし、伸もあまり嬉しそうではない。
「何?」
と亜由美が尋ねる。
「いいえ、こちらのことですわ」
迦遊羅が答える。
「ってひときわ男の子達が不機嫌なような気がするんだけど?」
不審そうにさぐりを入れる亜由美を当麻が椅子に座らせる。
「気にするな。たいしたことではない」
征士が答える。
「そうそう。あゆは気にしないでいいんだよ」
にこやかに伸が付け加える。
亜由美は首をかしげながら手を合わせる。
いただきます、と皆で言って夕食を食べ始める。
一番早くに食べ終わるのは征士。食べ終わると夕刊を広げて読み始める。
ナスティ、迦遊羅、亜由美はほぼ同時期に食べ終わる。
伸は給仕役のためにやや遅くなる。
残る当麻はお代わり際限なくしているために一番遅い。
「お前、食ったら風呂入れよ。でもって、髪の毛洗ったらちゃんと乾かせ」
もごもご当麻が言うのを聞いて亜由美は声を上げる。
「めんどくさいー。夏なんだからいいでしょー」
だめ、と当麻が却下する。
「長時間ぬらしていたらいたむ。おまけに湯冷めする。風邪ひきたくなかったらちゃんと乾かす」
はーい、と亜由美は生返事をする。
「俺はリビングにいるから出たら直行しろ。チェックするから」
「当麻、お母さんより口うるさいー」
亜由美がぶつぶつ文句を言う。
「そんなに言うなら当麻が乾かしてよー」
わかった、と当麻が了承して亜由美は驚く。
「お前が乾かすより俺が乾かしたほうが効率いいから」
当麻が平然と答える。
「姉様の負け、ですわね」
迦遊羅がくすくす笑って言う。
「〜〜〜〜〜〜っ。お風呂入ってくるっ」
「長湯するなよ。あとがつかえるから」
すかさず、当麻が突っ込み。亜由美はあっかんべーと振りかえって舌を出す。
その様子に伸達が笑う。
ふんとそっぽを向いて亜由美はダイニングルームを出ると部屋に戻る。用意をしてきてバスルームへと向
かう。

風呂を出て亜由美は髪の毛をごしごしタオルで拭いてドライヤーを探す。
乾かし欲しいとは言ったものの皆の前で乾かされるのは結構恥ずかしい。
が、ドライヤーが見あたらない。
はっと気付く。
「まったく。人を信用してないんだから」
怒りをあらわにして亜由美は呟くとリビングに向かう。
「ちょっと。当麻っ。ドライヤー貸してよ」
言うなり、当麻は前に座れと合図する。
「自分で乾かすから」
んにゃ、と当麻が却下する。
「しばらくは俺が管理する。でないと体力のないお前、すぐに寝こむことになるぞ」
その分析はあながち当っているのでしかたなく亜由美は当麻の前に座る。
ほら、と当麻が言う。
「毛先、まだこんなに濡れてるぞ。これでドライヤー当てたら逆にいたむだろう」
当麻が亜由美が頭に載せているバスタオルを使って丁寧に水分を取る。
「当麻ってなんでわざわざ髪の毛の事まで気にするわけ?」
「お前が気にしないから代わりに気にしてやっているだけ。普通、女の子なら異常なほど努力しているは
ずだぞ?
めんどくさいなら短くするんだな」
当麻が言いながらせっせと手を動かす。
「短くしたらいざというとき邪魔になるから」
亜由美は短く答える。