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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~道しるべの星おまけ~

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当麻はそうか、と納得してドライヤーを当てにかかる。
正直こうやって構われるのは今は気分がいい。
今まで出来るだけ人に迷惑をかけないようにと心を砕いていただけにこうやって甘えられる人間がいる
のは気分がいい。
亜由美は三角座りをして顔をひざにうずめる。
顔が緩んでしまうので隠したのだ。
ただ、ドライヤーの音だけが部屋に響く。
「こんなに気分がいいならずっと乾かしてもらおうかな」
亜由美が呟く。
「何か言ったか?」
ドライヤーの音にかき消されて何を言ったのか伝わっていない様だった。
亜由美は首を振る。
当麻はそれ以上聞かずにただ乾かすことに専念する。
長い時間をかけてようやくドライヤーの音が止まる。
その後ご丁寧にもブラシをかけてくれる。
ようやく最後の一梳きを終えて当麻は亜由美の髪に見とれた。
流れるような黒髪はつややかに輝いている。天使のわっかまでちゃんとある。
「俺って天才かも」
自分の腕に惚れ惚れとする。
「俺、美容師になろうかな」
当麻が一人ごちると亜由美がばっと振り向く。
「だめっ。当麻はノーベル科学者になるのっ」
なんだそれ?と当麻が尋ねる。
「昔、お願いしたでしょ? 当麻にノーベル賞とってって。当麻、ちゃんととってくれるって言ったもん」
「昔ってどれぐらいだ?」
わかんない、と亜由美は答える。
「ずいぶん昔のような気がするけど・・・。だめ?」
上目遣いに亜由美が当麻を見つめる。
当麻が苦笑いする。
「ノベール賞とってーったらとってー」
亜由美がねだる。
「俺がとってもお前には何もないんだぞ?」
当麻が答えると亜由美は言う。
「当麻が世界的に有名な科学者になるのが私の夢なのっ。当麻はアインシュタインもびっくりするような
科学者にのなるのよっ」
亜由美はきらきら瞳を輝かせて当麻の輝かしい未来に思いをはせる。
「それで私はノーベル賞科学者の令夫人なのよっ。当麻は絶対にすばらしい人になるんだからっ」
嬉々として語る亜由美を見て当麻は頷く。こんな顔を見られるなら努力しても構わないだろう。
「わかった。お前がそんなに言うならとってやるよ」
その答えに亜由美はわーいと喜んで当麻に抱きつく。・
「当麻、絶対に絶対にとってねっ。応援するからっっ」
ん、と当麻は答えて亜由美の背中に腕を回す。
喜んでいる亜由美を見るのは気分がいい。
しばし当麻は腕の中の感触を味わう。
それからしばらくして当麻は亜由美を引き剥がす。
「そろそろ寝ろよ」
その当麻の言葉に亜由美が嫌そうな顔をする。
「もう少し、当麻のお側にいたい」
「明日も学校休んでやるから、我慢しろ」
亜由美がねだる様に当麻を見つめる。
「わがままも言ってもいいやつとだめなのがあるの。俺がお前が寝こむ原因を好んで作るわけがないだろ
う?」
亜由美はしぶしぶ頷く。
それから恥ずかしそうにきょろきょろ回りを見渡して誰もいないことを確認すると当麻の顔を見つめる。
「おやすみのキスして」
恥ずかしそうに消え入るような声で亜由美は願う。
その姿がかわいらしくて当麻は微笑むと額にちゅっとキスする。
「そっちでなくてこっち」
真っ赤な顔をして亜由美が自分の唇を指差して言う。
ん、と当麻は返事をすると亜由美の口にチユっとキスをする。
唇を離すと同時に亜由美は立ちあがってばたばたと部屋を出て行く。
出て行く寸前に亜由美は振りかえっておやすみっ、と顔を真っ赤にして叫ぶと出て行く。
「あいつ、ほっとーにかわいいやつ」
呟いて当麻は声を立てて笑った。

<章=ソウルラヴァー 守る力 道しるべの星3>


翌朝、当麻は征士と伸にたたき起こされる。
寝ぼけた当麻が亜由美に抱きついて何をするか分からないので男共の手で起こされるのだ。
寝ぼけたままダイニングルームへずるずると連行される。
すでに亜由美と迦遊羅は起きていた。
「おはよう」
亜由美が顔を赤らめて挨拶する。
「おはよう」
ようやく目を覚ました当麻はそんな亜由美をいとおしげに見つめて返事を返す。
「朝から二人の世界に浸らない」
伸が注意して二人ははっと我に返る。
いただきますと叫んで慌てて亜由美が朝食をかっこみだす。
急いで食べ過ぎて喉に詰める。
迦遊羅があわてて水を飲ませ、隣の当麻が背中をたたいてやる。
「死ぬかと思ったー」
げんなりした声で亜由美が言って当麻と迦遊羅が同時に叱る。
「急いで食べるからでしょう? お行儀が悪いですわよ」
「見境もなくがっつくからだ。しっかり噛んでゆっくり食べろとあれほど言ってあるだろう?」
「すみません」
と亜由美がしゅんとうなだれる。
その様子に笑いが巻き起こる。
「皆して子供扱いするんだからー」
むすっとして亜由美が言う。
「実際子供だろうが」
当麻が突っ込む。
「当麻と一個しか年違わないんだからねー」
亜由美が反論する。
「あゆって年誤魔化してるんじゃない?」
伸が言って征士もうむ、と同意する。
「ですわね。私よりも幼い気がすることは度々ですもの」
迦遊羅も同意する。
残るナスティを見るとにっこり微笑んで言う。
「皆の中で一番子供っぽいと言えばあゆよね」
一同にしっかりと子供だと言う認定を受けて亜由美はがっくりを肩を落とす。
「今年中にめいいっぱい大人に成長してやるっ」
決意を新たに叫ぶ亜由美を皆は笑いながら見つめる。
「信じてないわね。いいわよ。絶対におとなになってやるー」
その決意が実るのは何年も後になってのことだとは亜由美も思いもしなかった。

皆が出払った後、亜由美は当麻の部屋へ直行する。非常時以外、こんな時で無いと部屋には入れないから。
ドアを開ける。
当麻は眠っていた。
ベッドの近くの床に座りこんで寝顔を見つめる。
幼い子供のような寝顔に亜由美は微笑んで見つめる。
安堵した寝顔を見つめている内に自分も眠くなる。
ベッドにもたれかかるようにして亜由美も眠った。
当麻は目を覚まして体を起こすとぎょっとした。
ベッドにもたれかかるようにして亜由美がすやすやと寝息を立てている。
あわてて起こそうとした手を止める。
その寝顔は実に安らかで幸せそうだったから。
ここ最近、ようやくそんな寝顔が見られるようになった。
ついこの間まではどこか張り詰めた糸のような緊張感が亜由美の中にあった。
安らいだ表情を見せることはあったが幸せそうな表情はここ最近見られるようになっていた。
両思いになってからようやく亜由美はこんな顔をするようになったのだ。
当麻はベッドから抜け出すとそっと亜由美を抱き上げる。
同じベッドで眠っていたいところだが、爆睡して見咎められることもある。
それならリビングで眠ったほうがまだましだ。
伸がタオルケットをリビングに出しておいたと言っていたのを思い出す。
抱き上げられて頭がかくんとのけぞって亜由美は目を覚ました。
「ほへ?」
寝ぼけた頭で現状を確認する。
ぼけーっとしているとリビングの敷物上に寝かされる。
亜由美が目を覚ましていることに気付いた当麻が亜由美の頬をつつく。
「お前、俺の部屋でぐーすか寝るなよ。勘違いされるだろう?」
「誰もいないからいいのー」
ぷにぷにとつつかれる感触を楽しみながら亜由美は答える。
当麻は手を離すとおいてあったタオルケットをかけてやる。