機動戦士ガンダムRS 第45話 悪夢は再び
サオトメは、何とか気持ちを切り替えてそう答えた。
2人は、早速テーブルの上にタブレットを置き占いアプリを開いた。
「イニシャルを入力するからアイリス曹長は、A・Oでいいんだよな?」
サオトメは、一応アイリス曹長にイニシャルを確認した。
「はい」
アイリス曹長は、どんな答えが出るかわくわくで終始笑顔だった。
「次は、血液型。
アイリス曹長の血液型は、何?」
サオトメは、アイリス曹長に血液型を質問した。
「O型です」
サオトメは、回答をタブレットに入力した。
「次に双方に対して質問が出るからそれに答えていくのか」
2人は、各々に出された質問に素直に回答した。
そして結果が出た。
「30%」
サオトメが結果を口に出した途端空気が凍った。
アイリス曹長の表情も先とは、打って変わって恐ろしい表情になった。
「どうして?」
アイリス曹長は、冷血な声色でタブレットに問った。
「所詮占いだよ。
人付き合いなんて実際やらなければ意味がない」
そんなアイリス曹長にサオトメは、フォローを入れた。
しかしアイリス曹長の表情は、不機嫌なままで腸が煮え返るほどの怒りを覚えているのは明白だった。
「他のアプリだったら結果が変わるかも」
サオトメは、アイリス曹長にそう提案した。
占いなど所詮人が作ったもので幾千万の通りがあると考えた。
すなわち他のアプリならアイリス曹長の機嫌が治るかもしれないと考えた。
「なんでこんなに低いの?」
しかしアイリス曹長は、目の前でこんなに低い結果が出されたことに納得できていなかった。
「この結果を変えられれば」
サオトメは、何とか現状打破のため良い策はないか頭を働かせたが全く持って何も思い浮かばなかった。
戦闘の戦術などは、ポンポンと策が出るのにこういう時の自分の無能さにサオトメはため息をついた。
サオトメは、恐る恐るアイリス曹長を見ると怖い表情でタブレットをにらみつけていた。
怖かったがサオトメは、怒ってくれるアイリス曹長が少しうれしかった。
「もう1回やります」
アイリス曹長は、不機嫌なまま2回目にトライしようとした。
「別の手があるんです」
アイリス曹長は、そういうと再び占いを再開した。
もしこれでもダメな場合最悪タブレットを粉砕しそうな勢いだった。
「わかった」
サオトメは、その気迫に負け何も言えなかった。
「イニシャルを入力して」
「待ってください」
サオトメがイニシャルを入力しようとしたときにアイリス曹長が横槍を入れてきた。
「私のイニシャルをP・Oにしてください」
アイリス曹長は、イニシャルの変更を訴えた。
サオトメは、少し考えると思い当たる節があった。
「ミドルネームか」
サオトメは、アイリス曹長にPの正体を尋ねた。
「はい、お願いします」
アイリス曹長は、答えると変更の許可を求めた。
「わかった。
これで進めるぞ」
サオトメは、アイリス曹長のイニシャルをミドルネームに変更した。
「あとは、前と同じで構いません」
サオトメは、タブレットを操作しながらPがどんな名前なのか気になった。
「結果が出るぞ」
タブレットの画面は、Loadを示す画面になった。
「どうですか?」
アイリス曹長は、そわそわしていた。
「すごい、95%だ」
サオトメは、結果を言った。
「やった、大成功」
アイリス曹長は、歓喜した。
「すごく変わったな」
サオトメは、結果の極端さに驚いていた。
「すっきりした」
アイリス曹長は、完全に機嫌を直していた。
「ところでアイリス曹長」
そこにサオトメが横槍を入れてきた。
「どうしたんですか?」
しかしアイリス曹長は、全く意に介さず返事をした。
「Pってどういう意味なんだ?
差支えなければ教えてほしいんだが」
サオトメは、アイリス曹長のミドルネームが何か気になっていた。
「プリティーのPです」
アイリス曹長は、即答した。
「プリティーか」
サオトメは、どこか納得したような感じだった。
「プリティーは、おじいちゃんがつけてくれた名前なんです」
アイリス曹長は、ミドルネームが誰につけられたのか答えた。
「アイリス曹長は、名前に相応しい素敵な女性だな」
サオトメは、自然とそんなことを口走っていた。
その言葉にアイリス曹長は、驚いた。
「もう、隊長はそうやって時々びっくりするような事をおっしゃるんだから」
アイリス曹長は、照れ隠しにそんなこと言って強がった。
「すまない」
サオトメは、軽率なことを言ってしまったと謝罪した。
「でも本当は、うれしいです。
ありがとうございます」
アイリス曹長は、照れながら笑顔で礼を言った。
※
η艦隊は、ヤキン・ドゥーエ攻略艦隊を指揮するβ艦隊と合流し補給を受けていた。
周囲を遊撃艦隊のユーピテルが哨戒行していた。
「補給作業は、まだ終わらないのか?」
自室でシャワーを浴び終わったブライアン艦長が通信でブリッジにいるイワン曹長に質問した。
「今しばらくかかります」
イワン曹長は、淡々と答えた。
「了解した。
もう少しのんびりさせてもらう」
ブライアン艦長は、もう少し休憩しようと考えていた。
※
η艦隊は、補給物資を全て受領した。
「艦長、全ての作業終了致しました」
β艦隊旗艦スクイードでは、オペレーターが艦長に報告した。
「全艦出撃」
艦長が命令するとヤキン・ドゥーエ攻略艦隊は、発進した。
ヤキン・ドゥーエ攻略艦隊の後方には、ソーラ・システムがあったが実はア・バオア・クーからも別働艦隊が出撃しておりそちらにもソーラ・システムが存在する。
これは、どちらか一方が破壊されてももう一方でカバーできるためである。
※
ヤキン・ドゥーエには相当数のモビルスーツ、モビルアーマーと艦船が防衛任務に就いていた。
「ナチュラル共の野蛮な大量破壊兵器などもうただの一発とて我等の眼前で使われては、ならない」
エザリア議員がホワイトハウスで防衛隊を演説で鼓舞した。
その演説は、イザーク大尉も聞いていた。
「血のバレンタインの後、もう二度と大量破壊兵器で虐殺しないと誓った我々の思いをナチュラル共は裏切ったのだ」
エザリア議員は、サイクロプスでジュユアもろともコロニー軍の戦力を奪う作戦を知らなかったためこんなことを言った。
「ジュール隊、出るぞ」
ジュール隊も決戦に向け発進した。
「もはや奴らを許すわけには、いかない」
エザリア議員も自分の演説に興奮していた。
※
ヤキン・ドゥーエ攻略艦隊は、ついにヤキン・ドゥーエ防衛隊を発見した。
「グリーン28、マーク13アルファ、距離350に敵主力部隊発見」
既にマン・マシーン隊も発進していた。
そして艦隊は、ダミーバルーンを展開した。
皆は、今か今かと攻撃命令を静かに待っていた。
※
「地球軍の勇敢なる兵士達よ」
モビルスーツ隊とモビルアーマー隊の混成部隊は、攻略艦隊に向かって進軍していた。
※
「敵艦隊、主砲射程に入ります」
アドラステアのオペレーターが艦長に報告した。
「全艦、攻撃開始」
作品名:機動戦士ガンダムRS 第45話 悪夢は再び 作家名:久世秀一