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エルオブノス
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艦これ知らない人がwikiの情報だけで時雨書くと:ケッコン

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 ドアを開けると、時雨が困ったような顔をしていた。

「…提督…ごめんなさい!」

 突然頭を下げられて、こちらも困惑する。
 なんだ。まだ指輪は出していない。何を謝っているんだろう。

「…やっぱり、怒ってる…よね?僕、あんな事…どうして…。」

 時雨が顔を上げると、その顔は今にも泣き出しそうだった。いい大人だと思ったはずの時雨は、叱られる子供のように切なそうな表情で僕を見る。
 何の話だろうか。僕は、時雨に対して怒る事なんて何も無い。けれど実際、時雨は今にも泣き出しそうな…ああ、泣いてしまった!

「時雨、どうしたの?泣かなくていいんだよ。僕は何も怒ってなんかいない。」

「…えっ?怒って…ないの?」

「どうして怒ってると思ったんだい?いつだって時雨はいい子にしてるじゃないか。」

 本当に不思議だった。僕には一切心当たりが無い。
 ひょっとして、誰かに何か言われたのか?だとしたら、誰が?何のために?

 しかし最終的に判明した結論から言えば、時雨の口から語られた真実は、想定外のものだった。
 誰も悪くない。僕も、時雨も、誰も。


 目元をぐいぐいと拭った後、時雨は僕を見た。涙に濡れて潤んだ瞳にドキリとしつつ、時雨が安心できるように微笑みを返す。大人らしい余裕のそれだ。実際余裕は無いが、まあ。

「…だって、僕だけ呼び出されるなんて…原因はあれしか思いつかなくって。」

「あれって?」

「え?あの、あれ…あれは、あれだよ。ほら…。」

 しどろもどろに言った後、口ごもる。「あれだよ」ともう一度言ったきり、俯いて黙ってしまった。
 さっぱり分からない。僕が関わっていて、時雨が怒られると思うような「あれ」とは、一体…。

「…提督。からかってる?」

 不意に時雨に睨まれた。
 とんでもない。本当に心当たりが無くて、時雨が何を不安に思っているか知りたい。それを知ったら、「大丈夫だよ」と頭を撫でて不安を無くしてやりたい。それだけが今の本心だ。

「からかってなんかいないよ。分からないんだ。」

「だって、提督笑ってるから…。」

 なるほど。そう取られたら困る。これは大人らしい余裕の笑みで、別に時雨をからかってニヤニヤしているわけではないのだが。
 …が、そういえば僕には「時雨ちゃん」と呼んでニヤニヤしていた前科があった。からかっていると勘違いされた事に関しては僕が悪い。

「ごめんね、時雨。違うんだよ。時雨が何か不安に思ってるなら、大丈夫だって伝えたくて笑ってみせたんだ。本当に、何を不安に思ってるのか分からないから…。」

「あ…そ、そうなの!?ごめんなさ…っ。」

 言葉の途中で、時雨の目から先ほどの比ではない涙が溢れて、言葉は切れてしまった。

「うう…提督は、僕のこと心配して笑ってくれただけなのに…僕は疑って、最低だよ…。どうして、こうなんだろ…。」

 そう言ってゴシゴシと目元を擦るが、涙は止まらない。僕を疑ってしまった時雨自身を責める事を、どうしても止められずにいるのだろう。

「…ごめ、なさい…泣いたって…て、とくが困るだけ、なのに…。」

 …時雨。

 ああ、そうなんだ。

 僕は唐突に察した。奇妙な確信を持った。

 時雨は、僕を好きだと思ってくれている。だから、僕を怒らせたり僕を疑ったり僕を困らせたりするのが本当に嫌で、嫌われるのが嫌で、泣いてしまうほど嫌で、そんな自分が嫌になってしまうのだ。


 泣き止む事が出来ずにいる時雨を、「思わず」ではなく、意識して抱き寄せた。驚いて固くなる時雨を感じる。
 優しく頭を撫でて、背中に手を回して支える。緊張を解きほぐすように。
 次第に時雨の体はしなやかさを取り戻し、耐えきれなくなったように僕の胸に顔を押し付けた。僕の服が涙で濡れてしまう事なんて、今は考えていないだろう。それが嬉しい。