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エルオブノス
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艦これ知らない人がwikiの情報だけで金剛書くと:改二

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「OK、これで最後ネー。」

 洗濯物の最後の一枚。
 最後の一枚を干す時、僕なんかは「ああ、これで終わってしまう」という寂寥感と達成感が混じったような気持ちになる。たかが洗濯物に何を想っているんだ、と自分でも呆れるのだが…そんな感覚が好きでもあるので仕方ない。

 が、金剛は全くそんな気持ちは無いようだ。さっさと皺を伸ばして、最後の手ぬぐいを僕に差し出した。まあ普通は洗濯物に感慨も何も無いだろう。

「…よし、終わったね。」

「提督、提督!Tea Timeネー!」

 ウキウキとした様子で、キラキラとした目で、僕に言う。まるで、手伝いを終えて遊びに行きたがる子供…いや、そのものだ。

「あれ?晴れてるから運動とか言ってなかった?」

「晴れてるから、今日は外で紅茶を飲むというのはいかがですカー?運動はその後でもいいネ!」

 自由だなあ。金剛は、本当は米国生まれなんじゃないだろうか。
 紅茶好きは英国人らしさの表れだが、自由で天真爛漫なのは米国人の印象が強い。そういえば、英国人男性は紳士的な態度を美徳とするが、米国人男性は力強さを美徳とするようにも思う。…金剛は、本当に米国生まれじゃないんだろうか。

「提督、金剛は紅茶とスコーンを準備するヨ!提督にはPicnic sheetか、代わりになる敷物を探して欲しいネー!」

 言うが早いか…というか言いながら、金剛は駆けていく。毎日訪れるティータイムなのに、どれだけ楽しみにしているんだろう。今日は普段と違ってピクニック気分とはいえ、紅茶に対するあの執念は、やっぱり英国生まれなんだなと思う。

 彼女の楽しみが、単なるティータイムではなく「僕とのティータイム」なのかもしれない…と期待するのは、自惚れが過ぎるか。
 彼女の性格がどうあれ、本質的には紅茶を好む麗しき英国淑女。一方の僕は、乱暴者でない自信はあるが、紳士とも言えない。単なる軍人らしからぬ軟弱な気質の男だ。


 いや…いや、くだらない。僕はこの鎮守府を任された提督で、彼女はそこに属する艦の一人で、そもそもの関係は上司と部下のそれでしかない。
 彼女のティータイムに付き合うのだって、部下の休息と精神衛生面を考慮しての事…でなければならないはずだ。本心はどうあれ。

 僕は、金剛は、上司と部下以上の関係になるためにここにいるわけではないのだから。


 …皆との関係について考えると、いつもこうだ。暗くなる。
 提督として在るべき姿は、僕の性質とあまりにかけ離れているから。提督なら毅然とした態度で皆の気の緩みを締めていくのが望ましいのに、僕は皆と一緒に緩んでしまう。おかげで鎮守府の雰囲気が和やかであり、まるで大きな家族のような和が存在するのは嬉しいが…そう思ってしまう時点で、提督らしくはない。

 だが、僕はそうなのだ。仕方ない。
 厳格な提督でありたくない。緩い提督でありたい。
 金剛に指示を出すだけの存在でありたくない。一緒に紅茶を楽しむ存在でありたい。
 今、そうしていられるだけ幸運なのだ。部下ではなく友達のような関係でいてくれる事で、僕はどれだけ救われているか。
 だから…彼女が淑女で、僕が軟弱で…そんな、ただの男女の関係を考えるように金剛との関係を考えるのは、贅沢とかいう以前にお門違いだ。

 僕の理想とする提督の姿は、安楽でありながら無感情である事。
 何があっても能面のように張り付いた笑顔を絶やさず、皆の中に家族の一員の如く自然に溶け込み、しかし何があっても特定の誰かに特別な感情を抱く事は無い。誰を贔屓する事もなく提督業務に支障をきたさず、それでいて今の緩さも保ったまま。
 提督は、全ての艦を「父親のように」愛さなければならない。僕はそう思う。それが「恋人のように」となったら、提督業務に支障がある。ある艦は大切にし、ある艦は前線へ、ある艦には改装も行わず…と差別が生じたら、結果は見えているだろう。戦果はうまく上がらず、そればかりか鎮守府の雰囲気だって悪くなり、艦同士の関係も悪化…負のスパイラルだ。

 僕は、想いを殺さなければならない。
 一人の男でいる権利は無い。僕は提督なのだから。


 どんなに、好きでも。



「……とく?」

「え?」

 声に気付いて振り返ると、心配そうな顔の金剛がいた。ティーポットとカップ、それとスコーンを載せたトレイを手にしている。
 もう戻ってきたのか。…というより、僕が長いこと考え込んでしまったのだろう。

「提督?どうしましたカー?」

 干したばかりの洗濯物を見つめながら提督がボケッとしていたら、それは心配にもなる。悪い事をした。金剛に頼まれていた敷物を準備できていないのも申し訳ないし…まったく、何をしているんだろう。くだらない思考に気を取られて。

「ちょっと考え事をしてたんだ。早かったね?」

「OH!提督、お悩みなら金剛が聞きマース!元気出していきまショー?」

 満面の笑みで、金剛は僕を促した。
 彼女なりに心配してくれているんだろう。だから笑って、元気な声を出して、ティータイムに誘う。「そう言われたら元気を出さないと」なんて思う前に、金剛につられて勝手に元気が出てしまう。

「Follow me!提督、敷物がなくてもTea timeはできるヨー!」

「はいはい。本当に金剛は元気だなあ。」

「お褒めに与り光栄デース。提督も男の子らしく元気でいないとNOだヨ!」

 場合によりけりだが、とりあえず今は、金剛がいてくれてよかったと思う。真面目な話に終始しなければならない場では「空気を読めない」という事になりかねない金剛の明るさが、暗くなりっぱなしでいたくない今の僕には、本当にありがたいのだ。