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207号室の無人の夜

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 呻くほどには痛くない頭をさすりながら振り返った先に立っていたのは魚住だ。
「いつまでやってんだ二年」
「す、すいません……!」
 蜘蛛の子を散らすような真面目な後輩を見送ってから、まだ百太郎をつついている一部の後輩に声をかけた。
「数学の平山は追試で問題の数字変えてくるから暗記はありえねーんだよ」
 言われて追試答案をよくよく見れば、問題の出題範囲も紙面構成も変わらないが、数字はたしかに変わっている。
「ホントだ……」
「わかったらさっさと練習に戻れ」
 背中を押してスターティングブロックに追い立てた。それから視線を感じて見れば、百太郎がいつにもまして上機嫌な顔で片手を挙げている。
「なんだよそれ」
「センパイ、これ。これ」
 掲げた手のひらを揺するので、同じように手を上げてやると、パシンと小気味良い音を立てて手のひらを打ち付けてきた。
 そのままプールに向かって駆けていく。
「コラ!走るんじゃねえ!」
「はーい!」
 呑気な返事が高い天井にこだました。
作品名:207号室の無人の夜 作家名:3丁目