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ゴーストハント 車椅子麻衣シリーズ 始まりの時 3

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レセプションの時にもサー・ドリーの前で結婚するつもりがあるみたいなこと言ってたっけ。
そういえば。


――怪我する前、真砂子が急に外にお茶をしに行こうと言い出したことがあった。
その時は何とも思っていなかったけど、喫茶店で、『昨日ナルに告白しましたの』と言われて驚いたのを覚えてる。
そして真砂子は笑って『フラれてしまいましたけれど』と言った。
もっと泣くのかと思ったけれど、真砂子は晴れ晴れしたような笑顔で、
「でも、あたくし新しい恋を見つけましたの。――安原さんですわ」
そう言ったのだ。
「安原さん?」
「ええ。ナルにフラれて、無様にも泣いてしまったあたくしに、ソファーを勧めてくださって、温かいお茶とお茶菓子に金平糖を出してくださいましたの」
「金平糖なんてあったっけ?事務所に」
ふふっ
真砂子は袖を口元に持っていきながら、嬉しそうに笑った。
「麻衣か、あたくしが玉砕した時に、慰めるために持ってました。って。安原さんにこにこ笑いながら何種類かの金平糖が入った竹籠をあたくしの前に置いたんですのよ。あたくしあっけにとられてしまいましたわ。だって安原さんその後、金平糖の味の説明をし始めて――『珈琲の金平糖はほろ苦いんです。でもちゃんと甘みもあるんですよ?まるで初恋の味みたいでしょ?』って言われて、勧められるままに頂いたんです。そうしたらほろ苦いけれどその後にはちゃんと甘くて……また泣きそうになったあたくしに、『僕の胸でよろしければいつでもお貸ししますよ?いっぱい恋をして、いっぱい玉砕してきてください。365日、原さんの為だけにお茶と金平糖と思いっきり泣く場所をご提供します』……その言葉を聞いたあたくしは、散々泣いた後に言ってやりましたの。『何度も玉砕するほど容姿には困っておりませんの』って」
思わず笑いそうになった。真砂子らしい。それに安原さんも。
「『それでは優秀な参謀をお探しで?』おどけた安原さんに、『その参謀さんが恋人になってくださるのなら一石二鳥ですわ』そう言ったら、安原さんはフリーズしてしまいましたのよ?」
コロコロ笑う真砂子。ああ……幸せなんだなーって思った。
「じゃあ答えは――」
「「僕でよろしければ。お嬢様?」」
そろった答えにあたしたちはクスクスと笑ってしまった。

それから、今まで以上にあたしと真砂子は仲良くなった。
オフィスがお休みで、真砂子がオフの時は2人で雑貨屋さんめぐりをしたり、美味しいお茶のお店を探したり、高校生ライフを満喫した。
足が駄目になった今でも、真砂子はあたしを外に誘いに来る。
オフィスの時はリンさんかナルを使って(ここ重要!)あたしを一階に降ろしたり、家の時はエレベーターまで車椅子を押してくれる。
あたしの大親友だ。

そんなこんなで、マーティンとルエラと一緒にロンドンに行ったあたしは、ルエラと二人で本当の親子みたいにきゃあきゃあ言いながら、雑貨屋さんやお茶屋さんに行ったり、外からだけだけど、観光名所を回ったりと、とっても楽しい時間を過ごした。
日本の皆も大好きだけど、あたしはナルと一緒に居たい。
家族がほしい。
いつかナルがプロポーズしてくれたなら。
こんな手のかかるあたしでも必要としてくれるなら。
あたしはどんな所にでも付いてこう。そう思った。


「ねえねえ、マイって『おりづる』って作り方知ってる?」
30分の休憩中、いきなり研究員のミスティーに声を掛けられた。
《できるよ?どうしたの?》
「あのね、前に一度だけ『おりづる』を見たことがあるの。すごく可愛くって、自分でも作ってみたかったんだけど、作り方が分からなくって……」
《わかった。教えてあげる。要らない紙あるかな?》
ミスティーはそこら辺のプリンターから紙を2、3枚持ってきて、あたしの横に座った。
《まずね、紙を正方形にしなくちゃいけないの。こうやって――》
あたしは長方形の紙を正方形にして、いらないところをカッターで切り落とした。ミスティーもちょっと苦戦してたけど、なんとか正方形の紙を作ることができた。
《それができたら、次に――》
あたしはゆっくりと鶴を折って行く。
気が付いてみるとソファーの周りには人だかり。
イギリスではあんまりこういうものは作らないみたい。
みんな興味津々って感じ。
《そうそう。うまいね、ミスティー。とっても丁寧だから、綺麗な折り鶴ができるよ》
「ホント?」
花が咲いたみたいに嬉しそうに笑うミスティー。
やっぱり女の子だなー。
その後、20分近く時間をかけて、折り鶴は完成した。
周りはおおーっと拍手。
あたしは、あたしが作った折り鶴をPKで宙に浮かべてテーブルの周りを一周させる。
女の子たちからは可愛いと大絶賛。
そしてミスティーは女の子たちに今度教えて!と迫られていた。


「お前たちは何をやってるんだ?」
一瞬にしてツンドラ気候。声の主なんてわかってる。
《あ、ナル》
まるでモーゼの十戒。
ざぁっと人が引いて、ここのラボの主が、綺麗に開いた人の道をこちらに向かって歩いてくる。
ちょっと癒しが足りないかな?
あたしは折り鶴をふわふわと動かして、ナルの前に浮かべた。
《手、出して。ナル》
怪訝な顔で右手を出すナル。
あたしはその上にゆっくりと鶴を乗せた。
「折り鶴?」
《あ、ナルは知ってたんだ》
「昔ジーンが折りたいと、駄々をこねたことがあった。どうやら僕達は2人とも不器用らしくて、本を読んでも分からなかったジーンは、そのうち諦めた」
ナルはそう言うと、あたしの頭の上にちょこんと折り鶴を乗せた。
頭を振るところりと手元に折鶴が落ちてくる。
あたしはテーブルの上にそれを置いた。
「ちょうどきりがいいところまで終わった。麻衣、食事をしに行くぞ」
《あ、もうそんな時間?》
時計を見ると確かに12時を少し過ぎたくらい。
ナルはあたしを抱き上げると、車椅子にそっと乗せてくれた。
そして絶対零度の微笑みで、
「全員仕事は終わったんだろうな?こんなところで油を売っているんだ。期限は守れるんだろう?僕は優秀な部下を持ったものだ」
真っ青になる皆。
あたしは微笑む。
《大丈夫。あたしが見ている限り、期限には間に合うよ。それにあたしも頑張るし》
こつんと頭を小突かれる。見上げると呆れたようなナルの顔。
「お前だけが仕事をしてどうする」
《何事もチームワークでしょ?足りないところをお互い補えば万事OK》
ナルはため息を吐くと、チーフルームに、あたしが朝置いてきたバスケットをあたしに渡して、車椅子を押した。
「各自、きりがいいところで食事に行ってかまわない。ただしそれなりの働きをしたら、だ」
これはナルの最大限の譲歩。
ああ、ナルって天邪鬼だなぁ。

それから、リンさんに声をかけて、あたしたちは噴水のある中庭のベンチでお昼ご飯を食べた。
お昼は軽めにサンドウィッチ。
もちろんハムもベーコンも抜きで。
その代わりコーンスープをポットに入れてきて、3人で分けて飲む。
《いいお天気だね》
空を見上げるとどこまでも青い空。
「……珍しいですね。イギリスがこんなに晴れているなんて」
「どうせ明日は雨だ。たまにはこんな日もあってもいい」
コーンスープを飲みながら、ナルが答える。