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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 シレーネは、なぜかアングリーボールやサンダーボールと共に、リフレッシュボールを召喚していた。しかし、リフレッシュボールは攻撃には用いられていない。
 ではどこに行ったのか、探すより前に答えはシレーネにより明かされた。
「アハハハ……! まさかここまで上手いこと引っ掛かってくれるとは思わなかったわね。天井に地面、どちらにもリフレッシュボールを設置することができたわ!」
 シレーネの言う通り、部屋の四隅に群青のボールが設置され、シレーネが放つ魔力に呼応するように光り輝いていた。
「シレーネ! 一体何をするつもりだ!?」
 問い詰めるイワンを、シレーネは嘲笑う。
「あーら、あんたには、あたしの心が読めるんじゃなくって? 落ち着いて考えてごらんなさい。あたしの目的なら分かるはずよ。あんた達は絶対に死ぬということもね!」
 イワンは冷静さを失い、頭に流れ込んでくるシレーネの思考をしっかりと読んでいなかった。
 イワンはほぼ、言われるがままに、シレーネの思考をじっくりと読んでみた。そして彼女が先程、チェックメイト、と心の中で呟いた理由が分かった。
「そんな、バカな……!」
「アハハハ! 分かったようね。じゃあ覚悟はいいかしら? あたしの魔法とエナジーを複合して作った、最強の氷に抱かれて死になさい!」
 今発動されれば、イワンはまず逃げられない。しかし、後ろにいる二人ならば、まだ可能性がある。
「ロビン! ジェラルドを連れて早くここから逃げて!」
 ロビンには、シレーネが意図すること、イワンが読み取った心など知る由も無かったが、部屋の各地に設置されたボールが怪しいことだけはよく分かっていた。
 しかし、なぜ避難しなければいけないのかまでは分からなかった。それに、イワンを置いて逃げるなど、絶対にできるはずがなかった。
「何をしているのです! 早く!」
 イワンは更に、ロビン達の避難を求めた。
「イワン、どうしてだ? 何故お前も逃げようとしない!?」
 ロビンは大声で訊ねる。
「いいから早く!」
「ふん、逃げられないのはボウヤだけじゃないわよ。あたし以外、全員まとめて死ぬわ!」
 シレーネは両手に光球を作り出した。
「まずい!」
 イワンには一瞬で、あの光球が四方八方に点在するボールを、起爆させるためのものと分かった。
「アイシクル・インフェルノ!」
 シレーネが両手の光球を解き放つと、上下に分かれ、分裂した。そしてそれは部屋の各地のボールに当たり、ボールに込められた力を引き出す。
 アイシクル・インフェルノ。その名が示す通り、辺りは一瞬にして凍結し、氷の地獄と化した。
 地上からは、尖った氷が隆起し、天井からは氷柱が降り注ぐ。
「くっ!」
 イワンは電気の光輪を足場に変えた。
『ドライブ!』
 光輪は、高速で動き出した。
 イワンの向かう先は、ロビン達の所である。彼らは部屋の出口の近くにいた。そこでイワンは、彼らだけでも外に押し出そうとしたのだ。
ーー間に合って……!ーー
 イワンの背後には、今まさに彼を指し貫かんとする氷が迫っていた。
「アハハハ! 何をしたって無駄よ! あんたらはまとめて死ぬ! アハハハ……!」
 極寒の冷風が吹き荒れる中、シレーネの笑い声が響き渡る。
「ロ、ビン……!」
 イワンは全身を氷に包まれながらも、ロビン達を逃がそうとした。しかし、二人に近づこうと前進するほど、イワンの体は凍え、向かい風も相まって進行速度はかなり落ちた。
 一方、ロビンは逃げようにも、足を凍らされ、一歩も動けないでいた。最早ここにいる者全てに訪れるは、死以外存在しなかった。ただ一つの、例外の可能性を除いて。
ーーどうする、ロビン……!? このままだと、オレは死ぬぞ……ーー
 ロビンは自らに問いただしていた。しかし、自分自身に、ではない。自らに宿るとされる、もう一つの自分に対してである。
 心の声に反応するかのように、ロビンに宿る力は、胸を熱くした。
「ぐっ! ……そうだよな? 傷物の体は嫌なんだよな……!?」
 ロビンの言葉に呼応するように、胸は更に高鳴る。
「……だったら、オレを生かせ。一時だけだが、お前に任せるぞ……! ぐああああっ!」
 ロビンは妖しい光に包まれる。同時に、足枷になっていた氷が、砕け散った。
「ロビン……、逃げ、て!」
 ようやくイワンが、ロビンのもとにたどり着くことができた。しかし、睫毛が凍りつき、目がまるで見えない。本当にたどり着けたのか、イワン自身には分からない。
 全身を包む妖しい光が止むと同時に、ロビンは剣を抜き放った。
「うぐっ!」
 イワンは腹に衝撃を受けると、地を転がされていた。
「ごほっ、ごほっ……」
 衝撃は少し鳩尾を打ち、イワンは咳き込んだ。咳をしながら腹に触れたが、斬られた傷はない。どうやら剣の横で打たれたようだ。
「ロビ、ン……。なに、を……?」
 イワンはまだ目を開けられなかった。
「……邪魔だ、引っ込んでいろ……」
 物凄く低く、聞き取りにくいがロビンの声らしきものが、イワンの耳に届いていた。
「うっわ、寒っ! 何だってんだ……」
 ジェラルドがあまりの寒さに目を覚ました。
「って、何だこりゃあ!?」
 辺りは全て凍結している上、体が一部凍ったイワンが横たわっていたのだ。ジェラルドが飛び上がるほど驚くのも無理はなかった。
「おい、しっかりしろ、イワン! うわ、冷たっ!」
 ジェラルドは抱き起こそうとしたが、イワンはあまりに冷たく、触れるのは難しかった。
『フレア!』
 ジェラルドは、火のエナジーを最小限に調整し、手の上で小さく燃え盛る炎を、イワンの凍てついた体に近づける。
「……暖かい、です。ありがとう、ジェラルド……」
 凍った睫毛が溶け、目を少し開くと、イワンは微睡み、再び目を閉ざそうとする。
「バカ! 起きろ! こんな寒い中で寝たら死んじまうだろ!?」
 凍死するよりも先に、ジェラルドらには氷柱に貫かれることによる死が迫っている。
「ていうか何なんだ、何が起こってるんだ!?」
 目覚めたばかりのジェラルドには、氷柱が豪雨のごとく降り注ぎ、地面からも氷が生えてきているこの状況を、理解することなどできるはずもなかった。
「くそっ、起きたと思ったら、もう終わりかよ……!?」
 ジェラルドは訳の分からないまま、迫り来る氷を睨むのだった。
『キュアベスト・オール』
 突然、ジェラルド達を黄色の光が包み、頭上から小さな光の粒が降ってきた。同時に体力の回復を感じる。
「何だ、これ……?」
「……っは!?」
 すっかり消耗し、微睡んでいたイワンが、急に頭をあげた。
「おわっ!? びっくりした。大丈夫かよ、イワン?」
「ジェラルド、気が付いていたんですね。ボクなら大丈夫です。でも、この光……」
 二人を回復した力の出どころは、眼前に、立っていた。
 右手に剣を持ち、左手を天に向けて上げている。その手の先から、エナジーは放たれていた。
「ロビン……?」
 ロビンは振り向くことなく、とても低い声で告げた。
「……死にたくなければ、そこで大人しくしていろ……」
 ロビンは迫り来る氷の剣に、手をかざした。
『グランドガイア!』