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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 ロビンの前方の地面が、巨大な扇状で金色に光り輝くと、その瞬間、強大な大地のエネルギーが湧き上がった。
 エネルギーは勢力を広めていき、雨のように降る氷柱も、地面に隆起する氷も溶かし、崩していった。
「何てエナジーだ……!?」
「これは、ロビンの秘めたる力……!?」
 ジェラルドとイワンは、シレーネの最大の魔術を、いとも簡単に打ち消していくエナジーを前に、圧倒されていた。
 ロビンのエナジーは、この場を氷の地獄と化した術者まで届いた。
「そんなっ!?」
 シレーネはとっさに、魔法で宙高くへ浮かんだ。大地のエネルギーは、ここまで到達するまでに、大分威力を削がれており、上空でやり過ごすことができた。
「まさか、あたしの最強の魔法を……!?」
『スパイアストーン!』
 ロビンは続けざまに、巨大な岩の槍を目の前に作り出した。
「ぐううう……!」
 ロビンは岩の槍へと、エナジーで圧力をかける。すると次第に、岩の槍はひび割れ、いくつもの塊を形成した。
「はああっ!」
 ロビンは、砕いた岩の槍を、全方位に向けて放った。
「危ない、伏せろ!」
 ジェラルドはイワンを抱えて伏せる。
「く、う……。きゃっ!」
 シレーネは障壁を作り、しのごうとしたが、連続する強力な岩の衝撃に耐えきれず、撃ち落とされる。
 砕かれた岩の槍は、部屋の隅に設置されたボールを破壊していった。ボールが壊れたことにより、この場に残った氷は消え、寒風も止んだ。
「こんなバカな事が……」
 シレーネは、先程岩に撃ち落とされた時に負った傷を、擦りながら戦慄した。
 自らの持つ、最強にして最大級の魔法を相殺されてしまった。このような事は、この魔法を生み出してから初めての事である。
 突如、シレーネの喉元に、冷たいものが突き付けられる。
 それは、ロビンの持つ剣の切っ先である。シレーネは、得体の知れない恐怖に震えながらも、剣の持ち主たるロビンへ顔を向ける。
 そこには、見る者全てを、底知れぬ恐怖に落とす、深紅の眼光。
「ひっ、いや……、いやぁ!」
 堪らずシレーネは腰を抜かし、悲鳴をあげた。
「ふんっ!」
 ロビンはエナジーを放った。二つの光輪が剣へと姿を変え、シレーネを上下から刺し貫いた。
「ううっ!」
 下から貫かれた勢いで、シレーネはすっかり脱力した腰を持ち上げられ、上から来た剣により、空中にまるで人形のように吊るされた。
 二本の光の剣に貫かれたが、シレーネには大した傷を受けていない。その代わりに、身動きを一切封じられた。最早シレーネには、一歩進むも退くもできず、指先さえも動かすことができない。
「はあああ……!」
 ロビンは、脇に構えた剣に、エナジーを込めていた。エナジーが増幅するにつれ、剣の上に覆い被さるように、それの何倍もの大きさを誇る、剣状のエネルギー体が形作られていく。
「あれは、コロッセオの時の……!?」
 ジェラルドは一瞬にして記憶が甦った。
 かなり前の話であるが、ロビンが放たんとしているエナジーは、かつてアンガラ大陸一の闘士を決する試合、コロッセオという舞台にてその姿を見せていた。
 そしてこのエナジーを放った後、ロビンは三日間眠り続けることとなった。
「いけません、今回は、あの時よりも……!」
 エナジストは、自らが使い得る量を超えたエナジーを放つ時、自らの生命力をも削ってしまう。そのエナジーが強大であればあるほど、消費する生命力も莫大なものとなる。
 その先に待ち受けるものは、紛れもなく死である。例えここでシレーネを倒したとしても、このままではロビンまでも危険であった。
「何とかして止めねえと、ロビンが危ない!」
「しかし、止めるといっても、一体どうやって!?」
 イワンとジェラルドが議論する間にも、ロビンのエナジーは更に増幅されていく。
 ロビンを中心に、エナジーによる強風が吹き荒れ、その勢いは立っているのも辛いほどに強まっていた。
 シレーネは宙から吊られた人形のような姿で、ロビンによってもたらされるであろう死に恐怖していた。
 瞬きすらもできず、涙ですっかり血走った目を見開き、呻くような悲鳴をあげることしかできなかった。
「くあああ!」
「……っ!?」
「ロビン!」
 ロビンはついに、武器に出現させたエナジーの剣を振り上げた。しかし、振り上げた所で動きが止まった。
 そして剣は、ロビンの手を離れ、カラカラと音を立てて地面に落ちた。
「うぐぐっ……! ぐあっ!」
 ロビンは苦しげに頭を抱え、地に膝を付いて悶え始めた。
 シレーネを突き刺していた二本の光の剣は、ロビンの意思から外れ、その効力を失った。
 拘束から解放され、シレーネはその場で尻餅をつく。
「ふぬがぁ! ぐおおぉっ……! くっ……」
 ロビンは尚も苦しみにのたうち回っている。
「ロビン、大丈夫か!?」
 ジェラルドは見ていられず、ロビンを助けようと駆け寄った。
「っ!? だめです! 近付いては!」
 イワンが叫ぶのとほぼ同時に、ジェラルドはロビンの周りに乱れるエナジーに弾かれた。
「うおっ!?」
 ジェラルドはロビンのエナジーに焼かれる前に手を引いた。
 グローブには、微かな焼け色と焦げたような匂いがある。これ以上無理に、手を伸ばそうものならば、骨の髄まで焼かれるやもしれない。
「くそ……!」
 ジェラルドは、ロビンを助けられないことを恨めしく思いながら、頭を抱えてのたうつロビンを見るしかなかった。
「ぐおっ、ち、血が……」
 ロビンは捻り出すように声をあげる。
「血が足りん……、オレが表れるには、死の危機が……! ぐあああ!」
 ロビンを包む、紫の不気味な輝きが、いっそう強くなるとすぐに消え、ロビンはその場に崩れた。
 ロビンの周りの障壁も消えた。
「ロビン!」
 ジェラルドはその瞬間を逃さず、駆け寄り、ロビンを抱き起こす。
「……っく! はあ……、はあ……」
 まだしっかりと息をしている。ロビンは、生命力をも使用するほどのエナジーを発動してしまったが、命に別状はないようである。
「よかった……、ったく、こいつめ。またヒヤヒヤさせるようなことしやがって!」
 ジェラルドは、ロビンの生存を確認し、安堵した。
「っと、まだ安心するのは早いな……」
 ジェラルドは、前で震えるシレーネに目を向ける。
 シレーネはすっかり圧倒されてしまったのか、震えるばかりでなんの動きも見せない。
ーーな、何だったの……?ーー
 シレーネは、これまでに起きたことを、少しずつ回想していた。
 イワンの思考を読む力を逆手にとり、目先の行動しか読めないような工夫をした。その結果、自身の最大級の魔法を発動し、この空間を氷に閉ざす事に成功した。
 しかし、重要なのはここではない。
 氷結の地獄、と言って遜色ないほどの氷の魔法が、たった一人の人間の力によって打ち破られてしまった。炎さえも凍てつかせるような、氷の魔術を用いたのに、全ての魔法はロビンという人間に消し去られてしまったのだ。
 いや、最早あの時のロビンは、ただの人間などではなかった。あの赤黒く光る相眸は、思い出しただけで、背筋どころか背骨の神経までも、凍り付かされるような思いになる。