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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 シレーネは、さりげなくロビンに視線を向けた。それだけの事でも、身の毛がよだつ思いである。
 ロビンは気を失い、ジェラルドの腕の中で眠っている。今ならば、ロビンの息の根を完全に止められるやもしれない。
 ジェラルドがシレーネを見ていたが、シレーネにはロビンしか見えていなかった。ロビンをどうにか始末したい。そうした気持ちが、あまりに強く出てしまっていたのだ。
ーーやるなら、今しか……!ーー
 シレーネはロビンへと手を向けた。
「マインボール!」
 魔力の消耗が激しく、シレーネが出せた光球は、手に収まりきるほど小さなものだった。これまでに比べれば、かなり小さいものであるが、無力の人間の頭を吹き飛ばす事くらいはできる。
「ふん!」
 小さな光球は、ロビンの顔に当たる前に、ジェラルドにパシッ、と取られてしまった。
 光球はジェラルドの魔封じの能力によって無力化され、小さな煙を上げて消えていった。
「悪あがきか? 見苦しいぜ」
「くっ!」
 シレーネは立ち上がり、飛び退いた。
「ライトミラージュ!」
 シレーネが着地すると同時に、ジェラルド達の後ろから、いくつもの光線がシレーネに向かって撃ち出された。
「っ!?」
 シレーネはとっさに障壁を展開したが、不意の攻撃の上魔力が低下していたため、数本受けてしまった。
「イワン!」
 イワンは電気の光輪を纏いながら、ジェラルド達へ歩み寄る。
「ジェラルドはロビンを連れて下がっていてください。とどめはボクが刺します」
「分かった。相手はもうズタボロだ、任せたぜ……!」
 イワンに全てを任せ、ジェラルドは退いた。
 イワンはジェラルドを横目で見送り、刀を手にシレーネへと歩み寄った。辺りは静まり返り、イワンの纏う光輪が、バチバチと弾ける音が響く。
「…………」
 シレーネは何も言わず、後退りする。
「随分と無口になりましたね。死期を悟りましたか?」
 イワンは切っ先を向け、更に距離を詰めていく。対するシレーネは、やはり後退するのみである。
「……ぃでよ」
「何を?」
「こないでよ!」
 シレーネは感情に任せて力を放とうとした。しかし、もう魔法もエナジーも底をつき、イワンには傷一つ与えられない。
「…………」
 イワンは無言のまま歩み寄る。たったこれだけのことが、シレーネに死の恐怖を与える。
「ま、待ってよ! そ、そうだわ、あたしの事、好きにしていいから! だから命だけは……!」
 シレーネは群青色のローブを脱ぎ始めた。しかし、女が裸になろうとしているのに、イワンは歩みを止めず、無表情で迫っていく。
 シレーネはローブの紐を解きながら、イワンが近づくごとに後ろへ下がった。そしてついに、シレーネの逃げ場はなくなる。
 壁際に追いやられ、シレーネは背中を壁に張り付かせた。同時にローブは解かれ、シレーネの乳房と陰部が露となる。
 イワンは表情を変えず、目をそらすこともなく、切っ先をシレーネの喉元へ突き付けた。
「ひっ!」
「シレーネ……」
 イワンはようやく口を開いた。
「あなたは、いや、あなた達は一体どれくらいの人間を殺したと思っているのですか? ギアナを壊滅させただけでも百人以上、ウェイアードを瘴気に包んで、それに精神をやられて命を絶った人も含めれば、千人にもなるでしょうね」
「そ、それは、デュラハン様に命じられて……!」
 シレーネは見苦しい弁解をする。
「……仕方なく動いていた、とでも言いたいのですか?」
「そ、そうなの! 本当はあたし、デュラハンに操られていたのよ! もとはただのエナジストの人間だったの、本当よ! 魔法はデュラハンから無理に授けられたもので……!」
 あからさま過ぎる嘘であった。身も心もデュラハンに捧げておきながら、言うに事欠き、デュラハンを自らの敵だと言い出したのだ。
「ほう、ならば、全て悪いのはデュラハンで、デュラハンはあなたの敵でもある、と?」
「そ、そうなのよ! だからあたしも、デュラハンを倒すのに力を……!」
「…………」
 少しの間が空いた後、イワンは切っ先を下ろした。
「信じてくれるのね。それじゃあ早くここを……」
『ブレイン・バースト!』
 イワンの左手人差し指から光線が出ると、シレーネの額に直撃し、頭上に光球が現れた。
 光球はシャボン玉のように、ゆっくりと宙に浮き、そして破裂した。すると様々な声が辺りに響いた。
『何とかこの場から逃れないと!』
『どうすれば、このボウヤを止められるかしら? そうだ、脱げば……!』
『どうして? このくらいの年の子なら、あたしの裸で欲情するはずなのに!? こうなったら、デュラハン様を……!』
『デュラハン様、申し訳ありません。でも、何とかこの場を切り抜けられた』
『例え演技と言えど、あたしはデュラハン様を侮辱するような事を……。デュラハン様、どうかお許しを』
 これら全ては、シレーネの本心の声である。
「これは、あたしの……? ち、違う! あたしこんな事!」
『本心が読まれてる!?』
 言い訳しようにも、その瞬間に本音がもれてしまう。
「このエナジーは、相手の本心を外に出すことによって、相手に本音を突き付けるものです。そうする事によって、相手は耳を背けようとして、身動きを取れなくなるのですよ。尤も、嘘をついている時、だけですが……」
 イワンはパチッ、と指を鳴らし、方々から響くシレーネの本当の声を止めた。
「もう逃げることも、言い逃れもできません。お覚悟を!」
「い、いや!」
 シレーネは走って逃げ出した。
『ケージ!』
 イワンは纏っていた電気の光輪を放ち、輪の中にシレーネを閉じ込めた。
「逃がしはしません! 出でよ、菊一文字の化身!」
 イワンは両手で刀を握り、強く念じた。すると、イワンの背後からゆらゆらと、長い銀の髪を持ち、白装束を身に付け、天狗の面を付けた刀の化身が現れた。
 化身の姿に合わせるかのように、イワンの金髪も銀色のものへと変わる。
「参ります!」
 イワンは化身と共に、電撃の輪に捕らわれたシレーネへと攻めかかった。
「やっ、はっ!」
 イワンがシレーネの左手左足を砕き、化身は右側を打った。
「はあああ!」
 イワンは回転しながら、化身と一体化する。
 つむじ風を起こしながら、相手を斬りつける必殺の奥義。
「真・修羅の舞!」
 身を切り裂く烈風と共に斬られ、シレーネは旋風に飛ばされながら血に濡れるのだった。
    ※※※
 衣服と髪を乱し、シレーネは自らの血の海に沈んでいた。
「……ん、く……」
 両手両足を折られ、上半身を半分以上斬られたというのに、シレーネはまだ死なず、息があった。
 普通の人間ならば即死しているほどの傷である。それでもまだ生きているとは、さすが悪魔のしもべと言うべきであろうか。
「デュラ、ハン、様……」
「もう喋らない方がいいです。せめて苦しみ少なく死にたいのなら……」
 イワンは刀の切っ先を、シレーネの喉元に付ける。
「それとも、せめてもの情け、止めを刺してあげましょうか?」
「……その必要は、ないわ……」
 その瞬間、シレーネの体が半透明になり、指先から砂のように崩れ、消滅し始めた。
「死神の餌食になるのですね。まあ、当然の事ですが」