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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 21

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 ジェラルドは確かな手応えを感じ、笑みを浮かべた。
「ジェラルド!」
 ロビンは駆け寄った。
「無事だったのか!?」
「へっ、当たり前だろ! それに、完全に奴の不意を突いてやった。あの魔女もさすがに耐えきれねえさ」
 シレーネが完全に無防備の状態に、大技を叩き込むことができた。あの細身ではひとたまりもあるまい、とジェラルドは勝利を確信していた。
 しかし、ジェラルドはもうシレーネを倒したものと考えていたが、ロビンは違った。
「ジェラルド、まだ油断するな。奴がこれで終わるとは思えない……」
 シレーネは滅した。そのはずなのに、周囲の禍々しい空気はなくなっていない。
「心配しすぎだぜ、ロビン。あれだけ食らっといて生きてるわけねえ」
 ロビンとジェラルド、特にジェラルドは完全に警戒を解いてしまった。
 この姿勢は、悉く仇となってしまった。
 突如として、ジェラルドの攻撃によって舞い上がった砂塵から、五つのボールが出現した。
「ロビン、ジェラルド、危ない!」
 いち早くイワンが事態を察知し、大声で叫んだ。
「な……!」
「んだとっ!?」
 二人が振り向いたときにはもう遅く、五つのシレーネのローブと同じ、群青色のボールは氷柱を矢のごとく撃ちだした後であった。
「くそっ!」
 ジェラルドは咄嗟にロビンの肩を掴み、無理矢理自分の後ろに下げさせた。そして先程のように、目の前で腕を交差させて守りの姿勢をとる。
 撃ち出された氷柱が、魔術によって作られたものであったなら、ジェラルドはそれを無効化できるはずだった。しかし。
「ぐっ、おお……!」
 氷柱はジェラルドの腕に突き刺さった。同時に血飛沫があがる。
「ジェラルド、大丈夫か!?」
「ぐうう……、何でだ? 何でこれはくらっちまうんだ……?」
 ジェラルドは訳のわからないまま、血の滴る腕を押さえる。
「なるほど、魔術は効かなくても、エナジーはちゃんと効くみたいね……」
 怒りのこもった女の声が響いた。
「その声は……!?」
 土煙は既に晴れ、倒したはずの魔女の姿が露となる。
「シレーネ!」
 シレーネはひしゃげた緑色の魔法のボールを放り捨てた。魔法のボール、ガーディアンボールがシレーネの身を守ったのだ。
 しかし、ジェラルドの一撃を受け止めたことにより、ボールは使い物にならなくなっていた。
 シレーネは徐に帽子のつばを上げ、顔をよく見せた。瞳孔はまるで、怒った猫、あるいは蛇のように縦細なっている。
 ジェラルドに殴り付けられた左の頬は赤く腫れ、口元からは血が流れている。
 シレーネは腫れた頬を擦り、口元から滴る血を指で拭い、その指先を見た。
「よくも……」
 シレーネは叫んだ。
「よくも女の顔を殴ってくれたわね!」
 シレーネはジェラルドに向けて、エナジーの波動を放った。
「がっ……!」
 目に見えない衝撃に、ジェラルドは尻餅をつく。
『バイオレントクール!』
 シレーネは、氷の刃をいくつも作り出すエナジーを発動した。それは広範囲の地面を刃で満たし、ロビン、ジェラルド共々串刺しにせんと迫り来た。
『マザーガイア!』
 ロビンは詠唱した。前方に扇状の範囲で大地のエネルギーを噴き上げ、相殺を試みた。
 大地のエネルギーに氷の刃が砕かれている隙に、ロビンはジェラルドを連れ後退した。
『ミスティック・コール!』
 シレーネは、深紅の球体に、黄色のまだら模様の入ったボールを、四つ呼び出した。
「逃がすか!」
 シレーネは深紅のボール、アングリーボールを放った。
 アングリーボールは高速で、ロビン達に迫ってくる。ロビン達に近付くに連れ、それは爆発せんと赤く光始めた。
「くそ、追い付かれ……!」
『ハイ・レジスト!』
 突然、ロビンとジェラルドを、光がドーム状に包み込んだ。
 アングリーボールは、二人を包んだ壁に当たると、熱気を持つ爆発を起こした。
「こ、このエナジーは……、イワン!?」
「今です! ジェラルドを連れて早くこちらへ!」
「あ、ああ!」
 ロビンはジェラルドに肩を貸したまま、急いでイワンのもとまで駆ける。
「チッ!」
 仕損じたか、とシレーネは大きく舌打ちをした。
 ひとまずシレーネから下がると、ロビンはジェラルドを座らせた。そしてジェラルドの腕を見る。
「随分と酷いみたいだ……。ジェラルド、もうお前は休んでいろ」
 先程氷柱の矢からロビンを庇った時に、ジェラルドの腕にできた傷は、思いの外深い。
 血は止めどなく流れ続け、痛みはジェラルドから握力を奪っていた。もう剣を握ることもできない。
「……っく! すまねえ。オレが仕損じていなければ……」
「いや、お前は十分すぎるぐらいにやった。後はオレ達が奴を倒す」
 ロビンはジェラルドの腕に、軽い処置を行うと、シレーネと睨み合いをしているイワンの横に並んだ。
「ジェラルドはオレが応急処置しておいたぞ」
 イワンは振り向かずに頷く。
「そこをどいてもらえるかしら、ボウヤ。あたしを殴ったあの男を殺さなきゃ、あたしの気が済まないからねぇ」
 シレーネは相変わらず、恐ろしい目をしていた。しかしイワンは動じることなく、睨み返していた。
「どうしてもやりたいのなら、ボクを倒してからにすることですね。もっとも、もうお得意のまやかしは使えないようですが……」
 ロビンは驚いた。
「イワン、どういうことだ?」
 イワンは指先から、青い光線を放っていた。それはよく見ると、シレーネの額に向けて放たれていた。
 シレーネは、怒りのあまりに気付かなかったのか、もしくは、この光線が直接害をなすものであると思わなかったのか。
 いずれにしても、イワンは『ブレイン・コネクト』でシレーネの脳と自らの脳を繋げるのに成功していた。
「……なるほど、外やここでボク達を惑わすことができたのは、そのボールのおかげでしたか。もっとも、外に放ったのはまた違ったボールのようですが」
 イワンは、看破した事をシレーネに突き付けたが、シレーネは表情を一切変えなかった。少なくとも、ロビンにはそう見えた。
 しかし、直にシレーネの思考を読めるイワンには、悪魔のような顔をしているシレーネが、僅かに心を乱した瞬間を逃しはしなかった。
「図星のようですね。何で分かるのかしら、と伝わってきましたよ。その答えは、これからの戦いでお見せしましょう……」
 イワンは地面に転がっていた刀を、エナジーで引き寄せた。そしてそれを握り、切っ先をシレーネに向ける。
「面白いじゃない。だったら教えてもらおうかしら!」
 シレーネは片手に光球を出現させ、魔法のボールを召喚した。
『ミスティック・コール!』
 群青、紫、赤のボールが、シレーネの手の光球から姿を表す。
「さあ、行きなさい!」
 シレーネの言葉と共に、三色それぞれのボールはイワンに攻めかかる。
『ブレイン・コネクト!』
 イワンは三本の指先から、例の光線を放った。光線は全てのボールに命中する。
『エレク・サークル!』
 続けてイワンはエナジーを発動し、バチバチと弾ける紫電の光輪を身に纏った。
 イワンの脳裏に思考が流れ込んだ。これは、ボールからのものである。どうやら、シレーネの魔法のボールには、意思のようなものがあるらしい。