二人の歩き方
馬村の本音
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やっぱりこんな化粧なんてしたって。
とすずめが口紅を拭おうとしたところで
馬村が振り返って、
「似合ってるから!」
「そんな顔するなよ。」
と言った。
「そんな顔…?」
「俺が似合ってないと
思ってると思っただろ?」
「うぐ…」すずめは口をつぐんでしまった。
馬村にはなんでもお見通しだ。
馬村はすずめのほうを身体ごと向いて
「違うから。」
「え…?」
「見せたくないだけだから。誰にも。」
馬村は俯いて手で顔を覆っている。
あ、馬村、耳まで真っ赤だ。
手の隙間から見える肌が赤く染まっている。
馬村はちゃんと私を見てくれてる。
「それってさ…」
「何?」
隠した手の隙間から
目だけがすずめの顔を捉える。
「何でもない。」
すずめはニヤけそうなのを我慢した。
「オマエ、顔キモイ。」
「なっ。馬村のせいじゃん!」
買いかぶりだとしても嬉しい。
「でも化粧しないほうがいい?」
「…いや…」
「嫌?」
「そんなん、もう聞くなっ。」
「え~~何何?
ちゃんと言えって
馬村いつも言うのに~。」
ニヤニヤが止まらない。
わかってるのについ突っ込んでしまった。
「うるせぇ。」
馬村はまた背中を向け歩き出す。
耳が赤いのが見える。
私はいつも馬村に嬉しい気持ちと
安心をもらってる気がする。
馬村は…私といて安心できてる?
馬村にも私と同じ気持ちになってもらいたいな。
そんなことを考えながら
すずめは再び自分の手をひいて
ズンズン歩く馬村の後ろ姿を見ていた。