ずっと一緒に…
結婚式当日。
カフェ近くのチャペルの控え室で、
すずめは、カメ、ツル、ゆゆかの
3人に好き放題されていた。
そこへすずめの母が入ってきた。
「まぁ!まぁ、まぁ、素敵!!」
すずめの母は娘の晴れ姿に
感動していた。
「カメちゃんもツルちゃんも
ゆゆかちゃんも、ダサいすずめを
こんな綺麗にしてくれて!」
母ちゃん、優しそうな顔をして
結構ひどいことを言う…。
「目がシバシバして重い…」
つけまつ毛とマスカラで
重たくなった目に慣れず、
つい文句をいうが、
自分じゃないみたいで照れくさいのの
照れ隠しみたいなものだった。
大輝、何か言ってくれるかな…。
という期待はとっくに捨てた。
こういうときに綺麗の一言も
言わないのが大輝だ。
期待すればガックリくるのはわかっている。
「すずめぇぇぇ!綺麗だなぁ!」
おじさんと父ちゃんが二人して泣き出した。
父ちゃんが二人いるみたいだ。
ウエディングドレスは、
細身のすずめに合う、
マーメイドラインの
大人っぽいヤツで、
大きいカサブランカの刺繍がしてある。
これはカメちゃん、
大変だったろうと思う。
「さっすずめ。時間だよ。」
チャペルの入口で、
すずめは父と腕を組んだ。
きっ緊張してきたっっ。
手に汗がじんわりと
にじんできた。
つまづいたり、コケたりしたら
どうしよう!!
ドクン、ドクン、と、
心臓の音がやけに大きく聞こえる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…
バーン!とチャペルのドアが開いて、
パイプオルガンの音が聞こえた。
すっと歩き出したところで、
すずめの父が、カツン!と小さく
ドアのレールでつまづいた。
「あっ」
と会場の誰もが思い、
母ちゃんの「バカ!!」
と思わず呟く声が聞こえた。
すずめは、「父ちゃん大丈夫?」
と言いながらも、プッと
笑えてきて、さっきまでの緊張が
どこかにいってしまった。
「すずめっ悪いっ!!」
父が慌てて体勢を整える。
「ううん。おかげでリラックスした。」
気をとりなおして。
再び歩き出す。
ドレスの裾を踏まないように、
一足、一足、ゆっくりと。
近づいて、神父さんの前に立つ
大輝が見えた。
かっこいいなぁ。
思わず言いそうになる。
大輝がこっちを見てる。
黒いタキシードを着て、
胸にはやはりカサブランカを
差していた。
こんな人が、自分の旦那さんになるんだ。
自分を心から愛してくれる。
こんな人、他にいない。
一歩一歩近づくにつれ、
現実なのか夢なのか
余計わからない気がした。
大輝の前に立ち、
大輝の手がすずめの手をとり、
一緒に壇上にあがる。
「綺麗だな。」
ぼそりと聞こえた。
やっぱり夢かも。
大輝がこんなこと言うわけない。
大輝がこっちをみて
「すげぇ綺麗だ。」
と言った。
ヤバイ、夢なら醒めないで!!
その後はもうあんまり覚えていない。
ただ、大輝がとった手も
やっぱりじんわり汗ばんでいて、
大輝も緊張してるのかも、
と思ったのは覚えている。
あと、「誓います」と言った
大輝の強い眼差しを見て、
一生何があっても
大輝についていくと思ったのは
すごくすごく覚えている。
フラワーシャワーでチャペルを出て、
投げたブーケは
ゆゆかちゃんの手に渡った。