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うそついてごめんね

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夕飯作りの時間になった。
伊助は台所に向かう中であれこれ考えていた。

(あの様子だと、ケンカじゃないな、多分。ケンカだったら、あんな風に悲しまずにイライラ怒るもんな、庄左ヱ門は。だとすれば何だろう…?

「伊助ー。
「あっ、きり丸。やっほー。
「やっほー。お、伊助、お前制服前後逆に着てるぜ?
「え?ウソでしょ、着替える時ちゃんと…。

後ろからもう一人の夕食当番、きり丸が声をかけてきた。
きり丸は伊助の制服の襟をくいっと引っ張ると声に出して笑った。

「あははは!ウソだよ~!
「あっ!こら、きり丸!

伊助は染物屋の子供である。
反物を扱う商人の子が服のことで間違うはずなどないのだが、咄嗟に言われると信じてしまう。

「へへーん。だって今日はエイプリルフールだぜ?伊助も誰かにウソつけば?
「もーっ!ぼくはそんな日だからって……あ。

エイプリルフール?
嘘をついてもいい日。

(もしかして…これ…?

「…?伊助、冗談だって。さ、早く飯作ろうぜ。
「ああ、わかってるよ。今日のご飯は…。

台所で献立表を見ていると、外からドタドタ音がして戸が勢いよく開いた。

「ごめーん!遅れたー。
「団蔵、何やってたんだよ。
「金吾達と遊んでたら、つい時間忘れちゃって。

恐らく、今回の庄左ヱ門の件の重要人物・団蔵が当番として入ってきた。
遊んだ後そのまま直行してきたのか、手や顔に汚れが目立つ。
これはちょうどいい。

「急いでくるのはいいけど、ご飯作るのにそんな手じゃ駄目だろ!ほら、一緒に井戸んとこ行って洗ってやるよ。
「え?え、別に伊助、ついて来なくても…。
「いいから!
「…わ、わかったよ。

きり丸、ちょっと任せた、と一言残して団蔵の腕を掴んで台所を後にした。

「…そこの手洗い場使えよ。変なやつ。



井戸で顔と手を洗い終え、手拭いで顔を拭いている団蔵に突然声がかけられた。

「団蔵。庄左ヱ門に何した?
「は?

ポカンとして顔を上げた団蔵が見たのは、腕を組んでこちらを睨み付けるクラスメイトの姿だった。
いつもの伊助のイメージからは想像できないくらい怒りに満ちた表情だった。
何を言われたのかを忘れて団蔵は小さく悲鳴を上げてしまった。

「ななななんだよ、いいいきなり!!!
「団蔵、今日庄左ヱ門と登校したんだろ?その時、何か庄左ヱ門にしただろ?
「へ?

団蔵は何故伊助がここまで怒っているのかわからなかった。
万が一にも庄左ヱ門が伊助に団蔵の嘘の話をしたとしても、クラスメイト一人が学校を辞めると言ったくらいでぶちギレするとは思えなかった。

「何のこと?伊助、庄左ヱ門が何か言ってたのか?
「今はお前に聞いてるんだよ。
「別にー、何もしてないよー。

ぶちっ

静かな夕暮れ時に、何かが切れる音がした。

「団蔵っ!!
「は、はいぃ!?

伊助は拳を握り団蔵に突き出した。
殴られるかと思ったが、その拳は団蔵の鼻先で止まった。

「団蔵、エイプリルフールだからって調子乗ってんじゃないぞ!ぼくにウソついて隠し通せるとでも思ったか!?
「ご、ごめんよ伊助…。
「謝る相手はぼくじゃないだろ!
「だから…!何なんだよ。

伊助は今にも団蔵に殴りかかるか、掴みかかりそうだった。
声を荒げる度に団蔵に一歩詰め寄り、団蔵は一歩下がっていった。

「庄左ヱ門にどんなウソついたか言ってみろよ。
「おれが忍術学園辞める~ってウソ。
「……バカ。

燃え上がるような怒りは鎮火したかに見えた。
手を下して伊助は目を伏せた。

「もっと下らないウソにしろよ。庄左ヱ門が信じたらどうなると思う?
「でも伊助。庄左ヱ門は別に普通だったぜ?寂しがったりとか…。
「だからバカって言ったんだ!!

再燃。

「庄左ヱ門は!一年は組の学級委員長だぞ!エイプリルフールだろうがなんだろうが、ぼく達の言うことを真摯に受け止めてくれるし、他のクラスや先輩方から『あほのは組』と言われたって、ぼく達十人を誇りに思ってくれる!そんなクラスメイト想いの庄左ヱ門に、何でそんなウソをつくんだバカ!それにな、庄左ヱ門は優しくて、ぼく達の思いを尊重してくれるやつだって知ってるだろ!
「……あ。
「寂しくても、自分が引き止めたら、お前の決意が揺れてしまう。辞めてほしくないけど言えなかったんだ。…庄左ヱ門、一人で部屋で泣きそうな顔してた。
「……!
「あの様子を見る限り、庄左ヱ門に内緒にしろとか言っておいたんだろ。そのせいで誰にも自分の辛さを伝えられなくて…見てられなかったよ!あんなに傷付いた庄左ヱ門…。

ようやく、団蔵は伊助が起こる理由に気付いた。
ただ騙すつもりが、知らない内に庄左ヱ門を傷付け、追い詰めてしまっていたのだ。
一番の親友でありクラスを支える級長が傷付いている姿を見て、伊助が動いたのだった。

「ごめん……、おれ、そんなことになるとは思わなくて。
「謝るのは庄左ヱ門にだろ!ご飯の時にでも、その後でもいいから庄左ヱ門に本当のこと言えよ。
「ああ…。

しかし食事の時はクラス全員が集まっている。
今回のことを知っているのは、伊助と団蔵と庄左ヱ門だけ。
できれば二人で話したいが、今日は運悪く登校日。
一年は組のよい子達のお約束で、庄左ヱ門が解放されるかわからなかった。
作品名:うそついてごめんね 作家名:KeI