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トラウマスイッチ

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「大輝?」


声をするほうに顔をあげる。


大輝は15年ぶりに母の顔をちゃんと見た。


シワだらけだ。

歳とったなぁ。と思った。

さっきまで母と話していた筈なのに、
確かに顔を見ていなかった。

怖かったんだ。

また拒否られるのが。


「大人っぽくなって!」

母が言った。

「ますますあの人に似てきたわ。」


今日、お互いに
顔を初めてちゃんと見て
喋った気がする。


「母さん…」


口からポツリと言葉が漏れていた。

ハッと気づいて口を押さえた。


ボロボロボロと母の目から
大粒の涙がこぼれて、

「またそう呼んでくれるの…」

と母が泣きながら笑った。


「いや、これは…」


二度と母と呼ぶまいと思っていた。


でも母を母と呼んだ瞬間、
胸に刺さった大きな杭が
スッと抜けたような気持ちになって、
大輝はソファに深く沈みこんだ。

そして、はぁっと一息吐き、
観念したように言った。

「母さん………ありがとう。
お祝い、嬉しかった。
それから会えてホントは嬉しかったよ。」

大輝は素直な気持ちを言葉にした。


「うっうぐっ…だっ大輝っ~~」

母はもう言葉にならないようだった。


「あーあ、ぐちゃぐちゃじゃねえかよ。」

「ん。」

と言って母にティッシュケースを渡した。


「すずめがグラタン作るらしいから
食べてってよ。オレも準備するから。」


大輝がスッと立ち上がると、
母も立ち上がって、
大輝をギュッと抱きしめた。

「わっなにすっ」

急なことで大輝はビックリした。


母さん…


こんな小さかったっけ?

小さい頃いつも見上げていた母は、
ずいぶん背が低くて、細くて
弱い女の人だった。

「ありがとう。ありがとうね。」

母が小さく言って、
大輝は母を抱き締め返した。

涙が大輝の目の端をうっすら濡らした。


作品名:トラウマスイッチ 作家名:りんりん