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Ich liebe dich

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タオルでかろうじて隠れているが、一糸纏わぬ姿とはこのことだろう。

「・・・・・・・へ?」

静まり返ったその場に蛇口から零れる水の音がぽたっぽたっ、と響いた。

「ごめんなさいっ!!オーストリアさんっ!」

先にフリーズしていた状態から正気に戻ったハンガリーは急いで脱衣場に戻ろうと振り返った。
しかし、どう動かしてもドアは開かないようだ。

「・・・・・・・オーストリアさん。鍵、閉められちゃったみたいです・・・・・。」

「何ですって!?」

ドアの向こうから鍵を閉めた張本人―――日本の声が聞こえた。

「いやぁ・・・。やっぱりお風呂でばったり☆イベントは外せませんよね〜。あ、ご心配なく、30分したら開けますので。それまで二人でごゆっくり。」

いままでになくはつらつとした声だ。更にイタリア、ドイツの少し申し訳なさそうな声も聞こえた。

「ヴぇーーーー!ごめんなさい、二人とも!でもこのぐらいしないと、って日本が!」

「すまないな・・・。まぁ、久しぶりに二人きりで話すのだな。」

脱衣場から見えた人影はもう消えてしまった。
どうすればいいのかわからないハンガリーは先程から立ち尽くしたままだ。

「ハンガリー。」

「は、はいっ!」

いきなり名前を呼ばれて動揺する。
声もうわずっている気がする。

「立ってないで入りなさい・・・。その・・・・目のやり場に困ります・・・・・。」

そう呟くオーストリアは耳まで赤くなっている。
メガネをかけていなくて本当に良かった・・・。オーストリアは心の底から思った。
ハンガリーは自分がどんな格好をしているかようやく考え真っ赤になる。

「っ・・・・・・・・//////」

恥ずかしがりながら、急いでお湯につかった。




「・・・・・・すみませんでした。」

しょぼんとうなだれながらハンガリーは謝った。

「何故・・・謝るのですか?」

「ずっと、逢いに行けなくて・・・。今日もオーストリアさんに偶然会えただけで、私は、その・・・夏コミの新刊を・・・・。」

「逢いに行かなかったのは私も同じですよ。あなたが悪いのではありません。しかし、忙しい中でも私より“なつこみのしんかん”とやらを優先していたとは・・・。少し・・・嫉妬しますよ。」

「ご、ごめんなさい・・・。」

「・・・・・・・逢いたかったです。」

ハンガリーに聞こえないくらい小さな声でオーストリアは呟いた。

(多分、私の方だけでしょうがね・・・。)

こんなに長く逢えないのは初めてだった。別れたからといって気持ちまで離れたわけではないのだ。どうして逢いに来てくれないのだろう・・・。何度そう思ったことか。

「私だって。私だって、逢いたかったですよっ!私はっ・・・・・!」

そのあとの言葉は聞こえなかった。

オーストリアはお湯にのぼせて倒れてしまったのである。

「オ、オーストリアさんっ!!だ、誰か!日本さん!居ませんか!!」

そう叫ぶといきなり脱衣場のドアが開いた。

「そろそろどちらかがのぼせるころかと思いまして。スタンバイしてて良かったですね〜。」

のぼせて気を失っているオーストリアをドイツとイタリアが連れていく。

「どうしてこんなことを・・・・・?」

問いかけるハンガリーに日本はニッコリと微笑んだ。

「みんな、あなた達が大好きなんですよ。」







オーストリアが気が付くと、ハンガリーに、膝枕をされていた。
うちわで扇いでくれている。
日本の浴衣がとても似合っていて、綺麗だ。

「・・・・・・ハンガリー・・・・?」

「あ、気付きましたか?オーストリアさん。」

「無様な姿を見せてしまったようですね・・・・・。・・・・・それもこれもみんなあの人たちのせいです!!あのお馬鹿さんたちがっ!!」

「あ・・・・。イタちゃん達を責めないであげてください。みんなオーストリアさんの元気がないから、元気付けてあげようとしたそうなんです。」

「私を・・・・・?」

「ええ。ドイツが言ってましたよ。溜息ばっかりついてたって。何か、心配事でもあったんですか・・・・?」

自分が原因だとは微塵も思っていないらしい。

「あなたですよ。」

「・・・・え?」

「あなたに逢いたかったんです。だから、溜息ばかりついてたんですよ。」

「・・・・・・・っ/////////」

「さて。先程の続きを聞きましょうか。」

「さっき?」

「私が倒れる前に言っていたでしょう?私だって逢いたかったって。私はっ・・・・何ですか?」

もうすっかり忘れていたと思ったのに。いざ言おうとするとすごく恥ずかしい。

「その・・・。私は・・・・。・・・・・////////」

「聞かせてください。ハンガリー。」

「私はっ・・・・オーストリアさんが好きなんですよっ・・・・・///////」

オーストリアにしか聞こえない、小さな小さな告白。それだけでいい。
彼女が自分を好きなら。それだけで。

(二重帝国時代のせいで欲張りになってたかもしれませんね・・・。)

いつも、そばにいたい。なんて・・・・。

「知ってますよ。ずっと、昔から。」

そう言って、ハンガリーの頬に手をあてる。
ゆっくりと口付けをしようとしたとき。



ガタ――――――ン!!!

オーストリアとハンガリーのいた客室の襖が、大きな音をたてて倒れた。

「痛いよ〜〜〜!!」

「ちょっ!イタリア君!何してるんですかっ!いいところだったのにっ!」

「お前達、静かにしないとばれるぞっ!」

襖は覗き見していた三人の重みに耐え切れずに倒れたのだった。

「もうばれていますよ、このお馬鹿さん達がっ!」

ゆらりと三人の前に立つオーストリアは般若の面のような顔で怒っていた。

「いや・・・。お夕飯の支度ができたのでお呼びしようと思ったらすごくいいところだったのでお邪魔しては悪いかなぁ〜と思いまして・・・・。」

「「「失礼しました〜!」」」

三人はオーストリアに恐れおののきながら、食堂へと走り去って行った。

「私達も行きましょうか。」

ニッコリ笑ってハンガリーも歩き始める。内心、ちょっと残念に思いながら。

「ハンガリー。」

オーストリアはくいっ、とハンガリーの手を引いて、素早く口付けた。

ハンガリーの耳元でこう、囁く。

「 Ich liebe dich.」



――――私は、あなたを 愛しています。――――



作品名:Ich liebe dich 作家名:ずーか