美しく羽ばたいて
破水から時々陣痛らしきものがくるも、
なかなか定期的な間隔にならず
お腹にモニターをつけられたまま、
すずめは産婦人科の病室にいた。
「はぁ、痛い…」
「しんどいか?」
大輝は諭吉から連絡をもらい、
仕事を早退して駆け付けていた。
「うん…腰が重い…」
急にくる陣痛と、
重くなる腰で辛さを訴える。
トントン、とノックする音が聞こえて、
「馬村さーん、モニター確認しますね~」
と看護師が入ってくる。
「いよいよですねぇ、お父さん。」
看護師の間でも、
大輝のイケメンぶりと愛妻ぶりは評判で、
ニコニコ愛想を振りまかれる。
「あ、はい…」
大輝はまた居心地の悪い感じになる。
「これ、どれくらい続くんですか?…」
「え?陣痛ですか?」
「どれくらいで生まれるのかなって。」
「あ~~奥さん、笑えてるし喋れるから
まだまだですよ。初産婦さんだし、
明日くらいまで続くかな。
本格的な陣痛になったら
こんなもんじゃ済まないですよ。
のたうちまわって叫ぶ人もいますから。」
看護師の言葉に、
二人ともゾッとした。
「ご主人、やることないなら、
こうやって奥さんの腰、
さすってあげてください。
痛み和らぎますから。」
看護師がすずめの腰をさすると、
すずめが「あ…楽…」と言った。
看護師が出ていって、
大輝はすずめの腰をさすってみる。
「もっと強くして。」
「強すぎ!」
「それ弱い!」
「なんかちがう~~」
いろいろ言われてやってみるも、
腰ひとつさするのも難しくて
うまくやってやれない。
あの看護師はどうやってたんだ?
大輝は途方に暮れた。
つぼみは、自分はやることやったし、
生まれたら会いに来るから
と帰っていった。