感情
「お義父さん。」
「うん?」
ぐいっとコップのビールを飲みながら
すずめの父は返事をする。
「すずめを嫁に出す気分って
どんなでした?」
ブホッ
すずめ父は噴きそうになった。
「オイオイ、もう
美羽の嫁入りの心配か?」
「あ…いや…。」
大輝は赤くなって俯く。
「そりゃあ、嬉しさ半分、
憎たらしさ半分ってとこかな。」
「憎たらしい…」
「そりゃあ、そうだろ。
どんだけ大輝くんが出来た奴でも、
いや、出来た奴だからこそかな。」
「俺が娘を幸せにするんだーって
仕事頑張ってきたのに、
ある時ふいっと横から
俺より幸せにできる奴が現れて、
かっさらっていくんだもんよ。」
酔っているせいか、
今日のお義父さんは
本音が出るらしい。
「う…スミマセン。」
「でもなぁ、俺のほうが
どうせ先に死ぬわけだし?
いつかはバトンタッチ
するときはくるんだもんな。
ずっとは幸せにできねえもんよ。」
「その相手が大輝君でよかったなぁ
と思う反面…」
反面?
言葉に詰まったかと思うと
急にすずめ父は大輝の首に
手をかける。
「わっお義父さん?!」
「って、こんな感じで
お前さえいなければぁぁって
思うこともあるわけよ。正直。」
びっびっくりした…
大輝は冗談とわかってホッとした。
「ま、娘を持つ父親の
宿命っていうやつかな。」
「すずめはモテなかったから
あんまり心配要らなかったけど、
美羽はあの顔とあの愛想の良さで
心配も多いだろうなぁ!」
すずめ父の言葉に、
「先が思いやられます…」
「オレがもうちょっと
我慢強くならないとな
って思いますけど。」
昨日の失態や、
今日の収まらないイライラを
どうにかしたいと思っての
言葉だった。