大地の初恋
すずめは頭がついていかなかった。
誘惑?大地を?
何がどうしたらそうなるの?!
「えーっと、吉森さん?
なんでそう思うのかな?
吉森さん、大地の彼女じゃないの?」
「違います。今は。」
「今は?」
「私、入学してすぐに
馬村先輩に告白して
付き合ったんですけど、
すぐに振られてしまって…」
こんなかわいい子を?!
大地、どんだけ恵まれてるんだ。
「そしたら先輩、
どうしても忘れられない
人がいて、やっぱり付き合えない
って言って…」
「その人ずっと付き合ってる人がいて
自分の片思いなのはわかってて、
結婚しちゃって
だから忘れなきゃって
付き合ったけど、忘れられないって…」
うぅぅっ!!
と、吉森さんが泣き出した。
「えっ吉森さん、大丈夫?
大地が結婚してる人を
好きだったとしても
それが私とかありえないよ。」
「そんなのわかんないじゃないですか。
現に馬村先輩、用事って帰ったの、
お義姉さんに会うためじゃないんですか?」
「うーん、私全然そんなんじゃないけど。
さっきも挨拶ろくにされてないし。
大地とはゲーム仲間っていうか、
小さい頃からよくゲームしてた
本当の弟みたいなもんで、
あっちも暇つぶしの相手くらいにしか
思ってないと思うけどなぁ。」
すずめは本当に心当たりがない。
考えたこともなかった。
「だいたい、私、大地の兄ちゃんの嫁だよ?
子どもいるし。そんな心配いらないから
吉森さん、がんばってよ。
かわいいんだしさ。」
「私がかわいいのはわかってるんです!
でも馬村先輩、そういうんで
好きになるわけじゃないって…」
「あ、そう…」
大地も罪な男だなぁ。
まぁ、顔は大輝そっくりだから
モテるのわかるけど。
でもいくら顔が似ていても
自分にとって大地は
やっぱり弟以外の何者でもない。
「おい、いつまで茶かかってんだよ。」
「っ馬村先輩っ」
勢いですずめに
つっかかったのを
ちくられるかと思い、
吉森さんは焦る。が、
「あ、ごめん、ごめん。
紙コップが見当たらなくて。
今持ってく。」
と何事もなかったように
すずめが振舞ったので
吉森さんはビックリした。