大地の初恋
あれこれゲームで遊んだあと、
大地と吉森さんは二人で
部屋に残されたらしい。
「お前らちゃんと話し合え。」
そう言って、ほかの部員は
「お邪魔しました~。」
と帰っていった。
「多分勘づいてると思うけど…」
大地が吉森さんに話し始める。
「うん…」
「俺の忘れられない人って
義理の姉なんだよね…」
「なんとなく…わかりました。」
「すずめは大輝…
兄貴と結婚してるし、
子どももいるし、
俺が小学校の時から
兄貴と付き合ってて、
兄貴もアイツのこと
すげぇ好きで、
すずめが他のヤツを好きって言ってるのを
二回告ってやっと付き合ったって
聞いてるし…。
それで今はお互いすごい好きで…
入り込む隙なんて最初からないんだ。」
「 だから諦めないといけないのは
わかってるんだけど、
でもなんか無理で。」
「ほかの子と付き合えば
忘れられるんじゃないかって
それで吉森さんのOKしたけど…」
「ごめん…」
吉森さんは無言で頭を横に振る。
「アイツにとってオレは
兄貴の弟でしかなくて
男じゃないんだ。
会えばそれを実感するけど
やっぱ会いたくて。」
「今日アイツが兄貴抜きで
うち来るって聞いて
用事って嘘ついた。
なんか期待してるわけじゃないし、
やっぱり弟だって自覚させられた
だけだったけど。」
大地は切なそうに俯いた。
「でも…いつかは諦めますよね?」
吉森さんが言った。
「え?まぁ、いつかは。」
「じゃあ、私、諦めません!」
「え?!」
「だって先輩のお兄さんだって、
お義姉さんのことフラれても
諦めずにゲットしたんでしょ?」
「え…?まぁ。」
「じゃあ、私だって
そうしてみせます!!」
「ええええっ!」
大地は口をパクパクしている。
「私の方がかわいいし、若いし
あんな年増には負けませんよ?
だから好きでいてもいいですか?」
「……好きでいてもらっても
いつ諦められるかわかんないよ?
何年もかかるかも。
待っててもらっても
吉森さんのこと好きって結局
思えないかもしれないし…」
「いいです!私。待てるだけ待ってみます!
だから先輩も、お義姉さんのこと、
好きでいるだけいてください!」
吉森さんはそう言ってスクっと立ち上がり、
「あー気持ちが晴れ晴れしました!
今日は私、帰ります。
じゃあ、先輩、また学校で!」
そう言って吉森さんは
階段をかけ降りていった。
「吉森さん?帰るの?」
すずめが声をかけると、
「おねーさん!
私負けませんから!」
手をギュッと握られ、
パタパタと帰っていった。
「何の勝負?」
すずめはやっぱり
女子高生の思考についていけなかった。