大地の初恋 回想編
ところが向こうから寄ってきて
好き好き言う女で、
すずめのように、
オレに目線を合わせるとか
オレを幸せにしたいとか、
そういう、相手を考えるヤツに
出会ったことがなかった。
みんな自分中心なんだ。
全然心を動かされることがなかった。
彼女を作らないまま高校にあがり、
大輝は就職して家を出た。
俺はホッとした。
これでうちにすずめがいるかとか
気にする必要がなくなったから。
でも反面、誰にも邪魔されない空間で
二人で何やってんだろう、
とモヤモヤもした。
その秋、大輝とすずめは結婚した。
最初から入る隙間のない恋だった。
すずめはびっくりするほど鈍いので、
俺に想われてるとか
まったく考えてもいないようだった。
大輝はすずめに毎回振り回されていて
やっぱり俺の気持ちなんか
気づいてないっぽい。
どうやら元々すごいライバルがいて、
そっちが強力すぎて、
他の男は眼中にないらしかった。
二人に気づかれてないのが、
救われてもいるし、
切なくもあった。
時々、幸せそうな二人にあてられて、
自分の気持ちをぶちまけて
めちゃめちゃにしてやろうかな、
と思うこともあった。