勝負
せっかくだからと、
その園の園児でもないのに
お弁当を校庭で広げて食べる。
大輝はアウェー感を感じて
居心地が悪かったが、
すずめと美羽は楽しそうだ。
午後の一番の競技が
父親の紅白リレーで、
「飯食ったあとなのに…」
と大輝はブツブツ言いながら
受付へ行く。
「お父さん、何番目に走るかな?」
すずめは美羽を抱っこして
やっぱりワクワクしている。
高校時代の運動会で、
運動部でもないのに
大輝は3年間
リレーの選手だった。
期待するなと言われても
おのずと期待してしまう。
大輝は白で、なんと
園児の親でもないのに
アンカーだった。
一番若いからと
押し付けられたらしい。
第四走者までで、結構差がついて、
白は負けていた。
「あぁ、白負けてる!!」
「大輝~~~」
すずめは祈るような気持ちで見ていた。
「赤がんばれー!」
「白追い抜け~!」
園児も親も、さすが大人の男の
リレーは迫力があって興奮した。
大輝にバトンが渡り、
大輝が走り出す。
「大輝ぃぃ!がんばれー!」
「お父さん、ばんがれー!」
みるみるうちに追いつき、
最後のコーナーで大輝は
赤のアンカーを捕らえた。
そしてわずかに前に出て
ゴールイン!!
パン!パァン!!
ハァッハァッハァッ…
久しぶりに走って
息切れがすごい。
勝ったかどうか
大輝にはわからない。
「ただいまの保護者による
紅白リレーは、
白の~勝ち!!」
アナウンスが流れて、
白組の園児と、
ほかのリレーメンバーが
手を叩いて喜んでいる。
「君すごかったねぇ。
久々に興奮したよ。」
園長先生に言われて
「あ、どうも…」
と大輝は照れた。
とりあえずコケなくて
ホッとしていた。
参加賞にビールをもらい、
大輝も少し満足そうだ。
二人のところに戻ると、
「お父さん、すごい!!」
と、またキャァキャァ
大興奮の美羽に
抱きつかれたので、
そのまま美羽を抱っこして
帰ろうとした。
すると、
「ありがとう!
馬村くん、与謝野さん。」
と矢田に声をかけられた。
「二人ともやっぱりすごいねぇ。
馬村くん、他のお母さん達から
すごい熱い視線もらってたよ。」
「やめてくれ…」
「ぜひうちに入園して
また運動会活躍してー。
入園説明会が○月○日で、
願書受付が……」
といろいろ説明され、
園のパンフレットを
もらってしまった。
矢田…意外に商魂たくましいな。
と大輝は思った。