クリスマスの約束
オレはアイツが喜んでる顔が
みれればなんでもいいんだけど。
馬村がそう思いながら迎えた
25日、クリスマス。
駅で待ち合わせをした二人。
「馬村!どこ行きたいか考えた?」
すずめが言うと、
「こっち。」
と言って馬村は
スタスタ歩き始めた。
「?どこ行くの?」
「ここのすぐ近く。」
といって来たのは…
……大学?!
「えっ待って馬村。
ここ入っていいの?!」
「私服だからバレねえよ。
学生のフリしてろ。」
ええええええ!
スタスタまるでホントの学生のように
馬村は一直線にどこかへ向かっていく。
階段を上ってちょっと寂れた風の
人気のない部屋が並ぶ学舎にきて、
あるドアの前で馬村は立ち止まった。
コンコン。
とノックする。
「はい、どうぞー。」
中から聞いたことのあるような
初めてのような声が聞こえた。
「いらっしゃい。」
そう言って出迎えてくれたのは
馬村にどことなく似た青年だった。
「こちらが与謝野さん?」
「えっはい。与謝野すずめです。」
よくわからないが
ひとまず挨拶をする。
「大輝の兄の大志です。
はじめまして。
ここの助手をしてます。」
「えっ!!」
すずめは驚きすぎて
挨拶も忘れて
大声をあげてしまった。
馬村にお兄ちゃん?!
「…大輝、与謝野さんに
何も言わないで連れてきたのか?」
「…まぁ。」
「口下手にもほどがあるだろ。
しかもクリスマスデートが
大学なんて女心がわかってないね。」
大志は呆れたふうに話す。
「いや、私が馬村が行きたいとこに
行きたいって言ったんで…」
とっさにかばう。
「へぇ、そう?
大輝はこんなだけど
よろしくね。与謝野さん。」
「あっこちらこそ、
よろしくお願いします。」
すずめは深々と頭を下げた。
「ハハッ面白い子だね。
大輝、ちょっと俺教授に呼ばれたから。
今日誰も来ないからゆっくりしてけよ。」
「わかった、サンキュ。」
「じゃあ、またね、与謝野さん。」
そう言って大志は出ていった。