クリスマスの約束
「馬村、三人兄弟だったんだね。」
「兄貴はもう家出てるからな。」
「大学の研究室なんて
初めて来た。
何研究してるのかなー。」
すずめは好奇心で
いろいろ室内を見て回りながら
「馬村、ここよく来るの?」
と尋ねた。
「前からちょっと手伝ってて。
オレもこの大学に
進もうと思ってる。」
「えっ」
意外な返答に
すずめはビックリした。
「ここ、すごい賢いんじゃ…」
「そうかもな。」
「もう目標があるんだ、
馬村は…」
すずめはちょっと
寂しくなった。
「今のままじゃ難しいけどな。
オマエは?」
「え?」
「卒業したら
田舎に帰ったりすんのか?」
「それは全然考えてなかった。
こっちは馬村いるし…」
「行きたいとことか
やりたいこととかねえの?」
「まだ全然決まってなくて…」
すずめは考えなきゃいけないんだけどと
しょぼんとする。
「じゃあ…」
「一緒の大学とまでは言わねえから、
進路考えるとき、オレのことも
視野に入れて考えて欲しいんだけど…」
「えっ…」
まぁ、一緒の大学は
天地がひっくり返っても
無理そうだけど…
「どうしてもやりたいことできて
遠くじゃないとダメとかなら、
オレも言えねえけど…」
「いや、たぶんそれはないよ?」
「ホントに?」
「だって私もその…
馬村と離れたくないし…」
すずめは自分で言って
顔が赤くなる。
「じゃあ、約束だからな。」
「うん。わかった。」
「それ、オマエからの
クリスマスプレゼントな。」
「へ?どれ?」
「さっきの約束。」
「そんなのでいいの?」
「そんなのじゃねえよ。
オレはオマエと卒業したら
離れるかもしれないって
思いながらあと1年過ごすのは
嫌なんだよ 。」
真剣な目で馬村が伝える。
「馬村…」
すずめはじんと心が
熱くなるのを感じた。
「オマエ、オレにどこ行きたいって
この前聞いただろ?」
「あの後考えたけど、
オレはオマエがいないと
どこ行ってもつまんねえから。」
「あ、あともう一個
欲しいもんあった。」
馬村が付け足す。