機動戦士ガンダムRSD 第1話 怒れる瞳
ヨーイ、ドン」
ジーン中尉が合図を言った。
テリー大尉は、掃除の方針を悩んだ挙句『丁寧に落ち葉をかき集める』ことにした。
これは、きちんと終わらせないと後々ジーン中尉が責任を追わせられる可能性があったからだ。
テリー大尉は、掃除エリアを見まわしてきちんと取りこぼしがないか見回った。
何度も何度も見て取りこぼしもないか確認してから落ち葉を袋に詰めた。
掃除は、終わったがだいぶ時間がかかってしまった。
テリー大尉は、急いでジーン中尉のところに戻った。
「戻りました。
すいません、だいぶまたお待たせして」
テリー大尉は、恐る恐る言った。
「お掃除、お疲れ様でした。
もう、あなたも人が悪いのね」
ジーン中尉は、不機嫌そうに言った。
テリー大尉は、ジーン中尉が何を言っているのか分からなかった。
「私が時計を見ていないことに気付いてあわてずに掃除したでしょ?」
ジーン中尉は、なぜ人が悪いかと感じた理由を説明し質問した。
「ああ、俺が掃除を始めるときに時計を見る様子がなかったから。
あわてて掃除してやり残しがあると後でジーンが怒られると思ったから丁寧にやったんだ」
テリー大尉は、素直に認めた。
ジーン中尉は、少し驚き頬を染めた。
「本当にすまなかった」
テリー大尉は、そういうと頭を下げた。
ジーン中尉は、動揺していて何か話そうとしていたがうまく言えなかった。
「すごくうれしかった」
ジーン中尉は、やっとテリー大尉に感謝の言葉を言えた。
「じゃあ」
テリー大尉は、はやる気持ちを抑えるのでいっぱいいっぱいだった。
「いいわ、デートしましょう」
ジーン中尉は、誘いを受けた。
「本当か?」
テリー大尉は、いまだ半信半疑だった。
「はい、私だってデートしたいなと思ってました」
ジーン中尉の驚くべきカミングアウトにテリー大尉は、驚いた。
「だ、だから私もテリーとデートしたいなと思ってたの」
ジーン中尉は、照れ隠しに強い口調で言った。
「デ、デートしたかったのか?」
テリー大尉は、驚きのあまり聞き返した。
「そ、そうよ。
5分以内に掃除を終わらせようが終わらせまいが関係なくOKするつもりだったの」
ジーン中尉は、自分の策を明かした。
「そうだったのか」
それを聞くとテリー大尉は、彼女を待たせてしまったことに少し罪悪感を感じていた。
「何度も言わせないでよ、意地悪」
ジーン中尉は、恥ずかしく小声で抗議した。
「すまない」
それでもテリー大尉の耳に入りテリー大尉は、謝罪した。
「それで意地悪な彼氏は、私をどこに連れて行くんですか?」
ジーン中尉は、反撃と言わんばかりに質問した。
(しまった。
誘うことに夢中でどこに行くかまでは、考えてなかった)
テリー大尉は、考えなしに誘ったことを後悔したが遅すぎた。
「それは、当日までのお楽しみだ」
テリー大尉は、苦し紛れにそう答えた。
「それは、楽しみですね」
ジーン中尉は、楽しみに言った。
先のが苦し紛れの答えだと気付かれなかった。
「日時と集合場所は、これからでということで」
2人とも次の有給がどこでどれくらいなのか分からなかった。
「いいわ」
ジーン中尉も異論は、なかった。
「ありがとうな」
テリー大尉は、感謝を述べた。
「こちらこそ掃除していただきありがとうございます」
その時ジーン中尉は、何か気付いた。
「この後一緒に基地に戻りませんか?」
ジーン中尉は、テリー大尉に一緒に基地に戻らないかと誘ってきた。
「そうだな、行こう」
テリー大尉は、即承諾した。
「掃除のお礼にお茶でもおごります」
ジーン中尉は、それぐらいはしないとと感じていた。
「いいのか?」
テリー大尉は、まさかそこまでしてくれるとは思ってもいなくて驚いた。
「もちろんよ。
さあ、行きましょう」
2人は、基地に向かって歩いて行った。
※
2人は、基地に着きお茶をしていたがジーン中尉は、テリー大尉に脚の剃毛をお願いした。
テリー大尉は、戸惑ったものの許可を出した。
そして医務室に移動すると軍靴と靴下を脱いでベッドに座った。
「このタライの中に足を入れてください」
ジーン中尉は、そういうとお湯の入ったタライを用意した。
(なみなみとお湯が入ってるな。
温かそうだ)
タライの中のお湯からは、蒸気が出ており見るからに温かそうだった。
「熱くないですか?」
ジーン中尉は、湯加減を心配した。
「ああ、ちょうどいい」
テリー大尉は、この足湯だけでも十分気持ちよかった。
「よかった。
それじゃあちょっとタオルを当てますね」
ジーン中尉は、そういうと脚に蒸しタオルを当てた。
(ジーンが蒸しタオルをふくらはぎに当ててる)
テリー大尉は、なぜか感動していた。
「どうですか?
熱くありませんか?」
ジーン中尉は、今度は蒸しタオルの温度を気にした。
「大丈夫だ」
蒸しタオルもちょうどいい温度でテリー大尉は、気持ちよかった。
「本当ですか?
よかった」
ジーン中尉は、たったそれだけなのにとても喜んでいた。
(足湯をしながら蒸しタオルを当てるのがこんなに気持ちとは)
テリー大尉は、半分剃毛のことなど忘れてしばしこの気持ちよさに身を任せていた。
「さあ、それじゃあ行くわよ」
ジーン中尉は、準備が整ったのか剃刀を持った。
「お手柔らかに頼む」
テリー大尉は、ジーン中尉の言葉で強制的に現実に戻された。
ジーン中尉は、テリー大尉のすね毛を剃り始めた。
「すごいです、剃れてます」
ジーン中尉は、剃刀で毛が剃れることに感動していた。
「剃刀の役割は、毛を剃るためにある。
だからどんな剃刀も一応毛を剃る能力は、あるだろう」
テリー大尉は、至極当たり前のように述べた。
「すごい、毛がたくさんある」
ジーン中尉は、そんなこと聞いておらずテリー大尉の脛毛の多さに驚いていた。
「女性より男性の方が毛深いし他人の男性の脛なんて見る機会がないからな」
テリー大尉は、半分あきれながら突っ込みを入れ続けた。
「痛くないですか?」
ジーン中尉は、痛くないかテリー大尉に質問した。
「大丈夫だ」
テリー大尉は、痛くないと答えた。
剃毛し続けていたジーン中尉が楽しそうに笑った。
「楽しんでくれてありがたいです」
テリー大尉は、そういうと今更どうしてこうなったのか考え始めた。
テリー大尉のすね毛は、どんどん少なくなっていきだんだん涼しくなってきた。
「だんだんきれいになってきた」
それは、ジーン中尉も感じていた。
(考えてみたら彼女に剃毛してもらうってすごいことじゃないかな?)
テリー大尉の思考は、麻痺してきたのか優越感を感じ始めた。
「楽しかった」
剃毛が終わりジーン中尉も満足していた。
「それは、よかったです」
テリー大尉は、何とも言い表せない複雑な気分だった。
「ちゃんと後片付けもしたし。
大丈夫ですね」
ジーン中尉は、今一度周りを見渡して片づけ忘れがないか探したがなかった。
「そうだな」
テリー大尉も同じように見渡したがなかった。
「それじゃあリーンホースJr.に行きましょう」
ジーン中尉は、母艦に戻ることを提案した。
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第1話 怒れる瞳 作家名:久世秀一