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 暫しの間飲み、話―…他愛ないものから直近の試合―…何れもスターティングメンバーとして出ていた各々の動きにつき忌憚なく指摘し合った後、スマンが先に出るぞと言い魚住と池上が去って行った後も、越野は練習を続ける。
 ―…さっきまでは魚住先輩にパスを貰い、ただ打っていたが―…
 試合、実戦ではどんなアクシデントが起こり得るか分からないから―…だから丁度良いパスを貰い、シュートチャンスを誂えて、お膳立てされた状態だけで打っていては……幾らうちで多少は3Pやロングシュートが打てる数少ないメンバーと言っても、陵南の得点アップには直結はしない。
 それに―…魚住先輩と仙道と福田。5番と3番と4番。
 何れも長身故……先輩に対しては無礼ではあるが、ゴール下以外でのシュートを苦手とするするためそのOFの手段の殆どがフリースローラインより更に内側となる。
 (―…仙道は、あいつ。)
 どこからだって打てるが、実は中に入り込んでガンガンとインサイドで攻め征く事を面白がっている。
 それを、越野は知っている。
 そして今でも時折……何かが切れたように魚住、池上の静止の視線も聞かず独りで動き回る。それは高校生のレベルを既に超えた凄まじい様であったが、壊れた不規則に止まらなくなる自動人形を見ているようで、どこか憐れだとも心中、思っていた。
 ―…DFに於いてはリバウンド担当ともなるあの三人は、特に相手チームの大型選手等の密集するペイントエリアで動く事も多く、接触による怪我、ファウル等を取りやすいポジションである。
 特にこの三人の内、どこからでも攻撃が出来る仙道が接触事故を起こすか、陵南のフロントコートの第一人者で県下最強のセンターである魚住が強豪との戦いでファウルが重なり退場、などなってしまったら……
 (……)
 考えただけでも恐ろしい事態だが、そう言う状況は十二分に起こり得る。
 だから……パスを受けたからスリーポイントラインよりシュートを打つのではなく、そのようなチームオフェンスが機能しなくなった事を考え、だから自分が打つと、そう考え練習を重ねていかなければならない。
 ―…魚住や福田、仙道のように大柄でなく非力な身であるので、ドリブルの力は彼等何れよりも弱い。OFの際にワンドリブルで相手に向かっていれば、強豪を相手にした際にボールを奪われる可能性もある。
 そう思い、リングと正面から向かい合っていた体を動かし、スリーポイントラインを大きく移動し、実戦を考える。
 眼前に相手がいると仮定し。
 ―…陵南ではインサイドの外から打てるメンバーは皆無だ。
 天才、仙道は気を付ける必要があるが、彼はDFを瞬時に抜くか躱すか―…内に入って仕掛ける事が多い。
 今迄の練習試合にしろ試合にしろ、外から打ったデータの極端に少ない……ここ一年程であれば、それこそ、前の試合で仙道が打ち越野が困憊し切るまで放ち続けた某校との練習試合以外は―…恐らく存在しなかったデータだろう。
 しかし例えばこれからの試合で越野がスリーポイントラインより外から、あるいはフロントコートでの攻防が群を抜き強力無比と謳われる陵南の得点源から外れた距離からシュートを打って行けば相手は警戒する。
 その時も考え、備えなければいけない。
 ―…目の前に対峙する敵を仮想し。そして既に越野が外から打って出る事に気付いている五人……大柄でパワーのある魚住、仙道、福田と非常に頑強な体力を誇る池上、植草を何故か思い出し、ふっと越野は笑った。
 先ずスリーポイントラインをその半円形の曲線に沿い迅く、大きく移動した後に、わざと遅目のドリブルを打つ。
 しかし、腰は上げぬまま。―…未だシュートは打たない事を相手に知らせる目的で。
 “やはり陵南の攻防は、中。パスを回すか、こいつのオフェンスはここまで”と、そう思い油断した相手は腰を上げるだろう。
その時に……
囮のドリブルを止め、越野は垂直に跳ぶ。
 通常のジャンプシュートと比べ若干難度の高いシュートだが、小柄なこの身にはその時だけでも高さを得る為の手段として必須のものであった。
 さっきのように入るだろうかと不安はあったが、空中で静止したその瞬間だけはだけは一切を考えず、肩からの力をシューティングハンドに伝え、打つ。
 実戦ではもっと。この程度では済まねえと思いながらも、リングに吸われるボールを確認し、越野はああと思う。
 そして幽かな気配を感じ、越野は目を外へと向けた。
作品名: 作家名:シノ