魔法少年とーりす☆マギカ 第三話「ジュネーヴ・ルビー」
件の廃工場、二百メートルほど西の街路。 背後には石垣の上で輝くライラック。 対して彼の浅葱の魔石は、譬えるならばフィラメントが切れる寸前の電球、今にも消えそうな弱い光。 身体中の傷は塞がる気配も無く、流血と共に体力を徐々に奪っていく。 左足の膝から下は既に感覚が無い。 もう帰る場所は何処にもない。 ふら付く足取り。 宛ら今のバッシュは死に場を求める野良猫であった。 パーカーの腹部に誂えた大振りなポケットに収まる札束。 今時らしくも無い十六ビット染みた単調な不在着信。 食い縛った口元が不思議と和らぐ。 最期のビジネスと家族への贈り物、双方を完遂出来るだけの力は、自身の死を家族に隠せるだけのノイズはまだ残っていたからだ。 衰弱しきった手に鞭打ち、迷い無く特定の番号に向け、短いメールを打ち込んだ。
立ち上がる力も無く傍の瓦礫に凭れ掛る自らの身体。 それでも彼の表情は穏やかであった。 依頼は完遂出来た。 遺される【彼女】が一人で暮らせるだけの、拠り所は遺す事が出来た。 送信ボタンを押し、視界が黒に呑まれていく中、続いて不在着信に掛け直す。
《バッシュ!? 何があったのサ、このままじゃ… 今からそっち行くよ》
《もう持たん》
電話の主は言葉を返さない。 言葉ともつかぬ声が電話越しに聞き取れる。 彼は封筒と携帯に、最期の魔法を、
隠れ蓑の魔法を掛けた。 品物は忽然と、この場に無かったかのように見えなくなった。
《依頼は… 完遂する。 手間を取らせるが… 最期に、頼む。 此処に、隠した物を… 依頼の品と、共に、持ち帰って、》
《―っ、判った、判ったよ! だから待ってて! 生きて待っててよ!?》
《彼女の、もとに。 書かれた、住所に》
《…バッシュ! ねぇ!? 返事してよ!? お願いだから!!》
音を立てて、限界を超えた身体が倒れ込んだ。 弛緩した目元に金髪が流れ落ちる。
彼の身体は二度と、動く事は無かった。
立ち上がる力も無く傍の瓦礫に凭れ掛る自らの身体。 それでも彼の表情は穏やかであった。 依頼は完遂出来た。 遺される【彼女】が一人で暮らせるだけの、拠り所は遺す事が出来た。 送信ボタンを押し、視界が黒に呑まれていく中、続いて不在着信に掛け直す。
《バッシュ!? 何があったのサ、このままじゃ… 今からそっち行くよ》
《もう持たん》
電話の主は言葉を返さない。 言葉ともつかぬ声が電話越しに聞き取れる。 彼は封筒と携帯に、最期の魔法を、
隠れ蓑の魔法を掛けた。 品物は忽然と、この場に無かったかのように見えなくなった。
《依頼は… 完遂する。 手間を取らせるが… 最期に、頼む。 此処に、隠した物を… 依頼の品と、共に、持ち帰って、》
《―っ、判った、判ったよ! だから待ってて! 生きて待っててよ!?》
《彼女の、もとに。 書かれた、住所に》
《…バッシュ! ねぇ!? 返事してよ!? お願いだから!!》
音を立てて、限界を超えた身体が倒れ込んだ。 弛緩した目元に金髪が流れ落ちる。
彼の身体は二度と、動く事は無かった。
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第三話「ジュネーヴ・ルビー」 作家名:靴ベラジカ