好きのカタチ
「今日も会ったね。」
次の日の学校帰り、
やっぱりシュウは追いかけてきて、
大輝と対面した。
「お前のせいで
バイト休む羽目に
なったじゃねえか。」
「えーすごい。愛だね。」
大輝の非難に、
シュウがおどけて言った。
「愛とか言うな。」
「でも昨日、すずめちゃん、
俺にアンタと別れるって
言ったけど?」
「は?」
大輝はシュウの言葉に
思わずすずめを見る。
「えっ! あれは
そういうことじゃなくて!」
すずめがビックリして
言い訳しようとするが
何から説明していいか
わからない。
「マジで言ったのか?」
大輝がショックを受けている。
大輝は傷つけないって
自分で言ったのに…。
すずめは大輝の表情を見て
泣きそうな顔をしている。
「あーもう。ウソウソ。
すずめちゃん、昨日、
アンタがもし他の女の子を
好きになって、
自分が別れたほうが
アンタが幸せというなら、
自分は別れることを選ぶって
言ったんだよ。」
「え…」
シュウがすずめの意図を
大輝に伝えてくれた。
「シュウ…」
「いつでもアンタを
幸せにするのは
自分でいたいんだ。
だから別れることが
アンタの幸せになるときは
そうする、ってさ。」
「俺にはそれが
理解できなくてさぁ。」
「自分が幸せにするって
そばにいなきゃ
できないじゃんって。」
「でも昨日ずっと考えてて。
俺、今まで相手が今
一番幸せなのはどうすることかって
考えてなかったなぁって。
離れてるから別れた方がいいとか
自分の基準で相手の幸せを
決めつけてたなって。」
大輝はシュウが一人で喋るのを
黙って聞いていた。
「で?」
「は?」
「今すずめちゃんが幸せなのは
どういうときなの?」
「? 私?!
んー。大輝と一緒のとき?
あとご飯食べるとき。
魚見てるときもかな。
全部一緒だったら最高!」
「俺とじゃなく?」
「…うん。ごめん。」
「ハッキリ言うねぇ!
という訳で!
今は譲ります。
が、俺といるほうが
幸せだと思うなら
いつでもウェルカムだから。」
「ないって言ってんだろ。」
「今はでしょ?
アンタがウカウカしてたら
俺がいつでも待機してること
忘れないでよ。」
「やるだけ無駄だけどな。」
「俺、アンタが
うらやましいよ。
そんな風に想われて。」
「今奪おうとすることが
すずめちゃんの幸せに
ならないなら、とりあえず
今はやめとく。」
シュウがそう言ってくれたので、
すずめは「ありがとう。」
とお礼を言って笑った。
「でもこれだけ許して?」
と、シュウがすずめの頬に
キスをした。
「!!! てめえっ!」
大輝が逆上する。
「じゃあね〜。」
と、シュウは涼しい顔で
自転車に乗って帰っていった。
すずめと大輝は顔をみあわせ、
「とりあえず解決…したのかな?」
と安堵した。
そう言いながらも、
大輝はすずめの頬をこすり、
「オマエ、今日、
100回は顔洗えよ?」
と言った。
「そんなに洗ったら
目も口も鼻も流れて
のっぺらぼうになるよ。」
すずめがそう真剣に言うので、
「ブッ!!」
と大輝は想像して
思わず噴いた。