好きのカタチ
「重…。」
途中からタクシーに乗せて
大輝はすずめを送り届けた。
タクシーの中で
酔ってるすずめは、
大輝の膝の上に頭を乗せる。
「ホントに大輝?」
と大輝を見上げながら
すずめがつぶやいた。
「なんだよ。
偽者なわけあるか。
オマエ相当酔ってんな?」
大輝は少しあきれ顔だ。
「今日は会えないと思ったから
会えてやっぱり嬉しい。」
「無理して時間作ってくれて
迎えに来てくれて
ありがとう。嬉しかったよ。」
エヘヘと笑うすずめに
思わず大輝はキスをする。
すずめの目がトロンとしている。
「へへへ。嬉しいなぁ。」
誘うような台詞と顔に、
人が我慢してんのに!!
と、すずめの顔をグーっと
手で背け、大輝は自分の顔も
窓の外に向ける。
「それに無理じゃねえ。
オレが会いたくて
行ってんだから
いんだよ。」
大輝も呟いた。
「フフフフフフフ」
すずめが急に笑いだす。
「何だ? 不気味だな。」
「うん。フフフ。」
すずめは家につくまで
ずっと笑っていた。
酔ったすずめを
家に送り届けて、
諭吉は、いつも悪いね、
と言って頭を下げた。
「いえ…じゃあ、オレ
帰ります。」
自分の家に帰ろうと
踵を返した時、
「随分家の人に
信用されてんだね。」
とシュウが現れた。
「オマエ、さっきの…。」
「自転車でついてきちゃった。」
「チッ、ストーカーかよ。」
「舌打ち…いろいろ口悪いね。アンタ。」
「オマエに礼儀正しくする
義理ねぇだろうがよ。」
「そういう態度ですずめちゃんを
束縛してんの?」
「は? 束縛?
何言ってんの、お前。」
「何勘違いしてんのか知らねえけど
思い込みもたいがいにしろ。」
大輝はイライラしていた。
「飲めねぇヤツに酒飲ませて
何しようとしてたんだよ。」
大輝はたたみかけるように言った。
「それこそ思い込みさぁ。
飲んだのはすずめちゃんの意思。
アンタに会う約束断って
俺達と居酒屋ついてきたのも
すずめちゃんの意思だよ。」
「!……」
大輝は何も言えなかった。
「アンタさ、モテるでしょ。
いい大学行ってイケメンで。
すずめちゃんじゃなくても
同じ大学に女の子
いっぱいいるじゃん。」
「うるせえ。
お前に関係ねえし、
オレにとって女は
アイツだけだ。」
「へぇ、見かけによらず
一途なんだね。
まぁいいや、
こちらは遠慮なく
いかせてもらうから。」
「てめえ…」
「怖。殴られる前に帰るわ。
じゃね。」
そう言ってシュウは
自転車で暗闇に
消えていった。
「なんなんだよ…」