つぼみの家
「馬村、久しぶりだなぁ!オイ」
「よぉ。」
大輝とすずめは翌日、
猿丸の家に来た。
「マジでこれ
もらってくれんの?」
学生結婚をした猿丸には、
ハイハイをする赤ちゃんがいて、
ソファベッドが邪魔だから
何とかしろと
奥さんに言われてたらしい。
「運んでくれるならな。」
「おー、もらってくれるなら
うちの配達用ワゴンで
乗せてくから。
昼なら出られるから
待っててくれよ。」
大輝はつぼみの家を説明した。
「ん?運ぶのお前ん家じゃねえの?」
「ちょっとな。」
「まさか…お前与謝野を…」
猿丸がお腹の周りをくるっと
出たように手を出して
妊娠させたのか?
とジェスチャーした。
「違うわ!お前と一緒にすんな。」
「なんだ、仲間かと思ったのに。」
マットを真ん中に
折り畳む風なソファベッドで、
リクライニングもできる。
「これならベッドって
感じしないから
家使わないときは
折り畳んだらよくね?」
「うん、いいかも。」
そうして昼には
猿丸と大輝で
ベッドを運び込んだ。
「スゲェ家だな。」
「知り合いの写真家の家でさ。
しょっちゅう外国にいくから
ちょっと管理頼まれたんだ。」
「おーいいな、それ。
俺も奥さんに追い出されたら
使わせてくれ。」
「お前、追い出されたりすんの?」
「…たまにな…」
猿丸は遠い目をしている。
「夫婦喧嘩しても
ここには来るなよ。」
「えっヒデエ!
まぁお前らは仲良くやれよ。
じゃ、仕事まだあっから。」
そう言って猿丸は
帰っていった。