修学旅行
翌日は大阪城と奈良だった。
団体行動だったが、
昨日の今日で、
周りがいろいろ気を遣ってきて
返って居心地が悪く、
二人は離れて行動した。
「なんなんだ。一体。」
すずめはこの状況に慣れず、
戸惑っている。
「まぁ、馬村くんの恋愛話なんて
好奇の対象以外の
何物でもないからね。」
「そーいうもん?」
「そりゃ、あれだけイケメンなのに
女嫌いで毒吐いてたんだからさ、
好きな人にはどんだけ甘くなるのって
見たくなるもんでしょ。女子は。」
「甘くって…////」
すずめはカァァァっとなる。
「甘いでしょ?アンタにだけは。」
ゆゆかがホントムカつくくらいにね、
とブツブツ言っている。
結局二日目はほとんど
喋ることもできないまま
1日が終わり、
京都に移動して宿泊だった。
ホテルの中でも女子のヒソヒソと
チラ見が絶えず、馬村のイライラは
募っていた。
「馬村機嫌悪いな。」
「オマエが昨日与謝野と
消えるからだぞ?」
と猿丸が言うが、
馬村がすずめにベタ惚れ、という情報を
女子に流したのは猿丸である。
「あれ、馬村。」
風呂あがりのすずめ達と
馬村の一行は鉢合わせした。
ホラ、馬村くんと与謝野さん。
えー、ホントに付き合ってるんだ?
とヒソヒソまた聞こえて、
馬村の額がピクピクする。
「どうしたの?馬村。」
すずめが機嫌の悪い馬村を見て
不思議がると、
「ごらんの通り、コソコソ
言われたり見られたりで
すっかり機嫌悪くなっちゃって。」
「ああ…」
犬飼の説明に納得するすずめ。
「明日は自由行動だから
気にせず回れるよ。きっと。」
すずめがそういうと、
「ん」
仕方ないなという顔になって
馬村は少し落ち着いた。
馬村達が部屋に戻ると、
「お前、あれだな。
ホントに与謝野が好きなんだな。」
「は?キモイ、ヤメロ。」
突然そういう話を猿丸が
振ってきて、馬村は戸惑う。
「だってさ、最初はニセ彼女
ってだけだったじゃん。
面白いからホントに付き合えば?
って俺も言ったけど
馬村が与謝野を
そんなに好きになるとはなー。」
正確に言うと、ニセ彼女の前から
すげえ好きだったけど、
とは言わずにいた。
「お前はどうなんだよ。
亀吉、付き合わねえの?」
興味はないが、
自分の話題から逸らすために
振ってみる。
「ああ、ダメダメ。
なんか告白なかったみたいに
なってっし。ニセ彼女でも
なんでもいいから
もっと意識してくれって感じだな。」
うまく話題が振れたのか、
その後は亀吉がこうした
ああした、んでガックリした、
という猿丸の恋バナを
延々聞かされ、
いい加減黙らねーかな。
と思いつつ馬村は眠りについた。