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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第六話

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 「フェリクスのソウルジェムを奪ったのは、ジェムがとても危険な状態にあったからサ。 同じ魔法少年を守る為に、おいら達はお前からジェムを引き剥がした」
 「危険な、状態?」
沈降する場の空気。 トーリスにはその言葉の意味が理解出来なかった。 あのソウルジェムはとてもグリーフシードなど産まれそうにないほど輝いていたのに。
 「今、ときわ町は魔法少年の数が増えすぎて、グリーフシードの供給が追い付いてない。 とても厄介な事になってる」
トーリスは乗り出して耳を傾けた。 完全に聞いた事の無い初耳の情報。 十字軍の面々は、そのような事は一言も、誰も口にしていなかった。
 「知らないのも無理ないよ」
筆記を続けるアーサーが補足を挟む。
 「俺達魔術部もあすなろ町、見滝原… 近場で虱潰しの調査を丸々一年近くやってきて、漸く纏まった情報だ」
 「そうそう。 取り分が減って、魔術部も危ないかもって思ってた時、おいら達は妙な出来事に出くわした」
予め用意してあったのだろうか。 イオンは空いた机から飴色の木製小箱を取り、トーリスの目の前で蓋を開けた。 臙脂のクッションで厳重に守られたグリーフシードが十二個。 …いや、何かがおかしい。
 「外見、行動パターン、呪いの癖。 コピペ見たいにまるっきり同じ魔女が、何匹も出るようになったのサ」
小箱には全く同じ、シャープ記号に似た飾りを頂点に掲げ、銀色の装飾も全く同じ位置に施された、クローン染みたグリーフシードが整然と収められていたのだ。 違和感は有る。 だが同じ魔女が出るのが何だと言うのか。 トーリスには新たな疑問が浮かび上がった。 頭の中で暈けた視界の中に次々とピースが加えられるが、上手く組むピースが見つからず、そもそも完成形すら彼には見当もつかない。 情報のピースは散らばっていく。
 「魔女の使い魔も、主人の魔女見たいに人間を喰うのサ。 どんどん育って魔女に成長する事はあるけど、魔法少年達が出くわすのは、ソウルジェムから生まれた魔女がほとんど」
再びアーサーが口を挟む。
 「一つのソウルジェムが産み出す魔女は一匹だけだ。 …普通はな」
 「だから何だって言うんだよ」
トーリスからすれば尤もな問い。 しかしタイピングの手を止めぬままハルドルは勝手に続ける。 液晶画面には藍色に白文字が淡々と猛スピードで記述されていく。
 「解らだな? 同じ魔女は絶対サ、一つのソウルジェムかきやしか生まれね(解るか? 同じ魔女は絶対に、一つのソウルジェムからしか生まれない)」
何かを混ぜるような手振りを加え、ハルドルはさらに続けた。
 「いっごのグリーフシードば使って、他人が全ぐ同じコピーば作らのは不可能のんだ(一つのグリーフシードを使って、他人が全く同じコピーを作るのは不可能なんだ)」
トーリスは紅茶をもう一口飲む。 彼らの言う事は何もかも未知の情報ばかりだ。 真偽はともかく、聞き流すには至れない、興味を引かれるものばかりであった。 喉は緊張を感じすぐに乾いていく。
 「…おいら達は、一つのソウルジェムでグリーフシードを何回も産み出してしまう。 あるいはそういう魔法を使える、特別な魔法少年が居るんじゃないか、って仮説を立てて、そいつを探す事にした」
 「わぁんどで、時間がね時は調査員ば雇って(自分達で、時間が無い時は調査員を雇って)」
 「ここぞ、って時にその調査員は死んじゃったけど、重要な事は遺していってくれた」
雇った調査員。 既に故人。 非常に暈けた視界の中で、ピースが一つ綺麗に収まった感覚。
 「その特別な魔法少年が、もしかして俺?」
 「正確にはソウルジェム」
散らばされていた脳内パズルはゆっくりと一つずつ噛み合いを確かめられ、確実に組み合うピースとそうでないものの別が付けられていく。 だが、完成形はまだ見当もつかない。
 「あの後、お前の持ってたソウルジェムはすぐに、検査にかけて解析したよ。 まず、穢れが混ざらずに分離してた。 水に油を注いだみたいに、はっきりとね。 もう、これは他のジェムと違うって思った」
アーサーはトーリスに書類を差し出した。 円卓上のグリーフシードとフェリクスに渡されたソウルジェムのスケッチの下部に、解読不能の文章が何十行もプリントされている。
 「砕いて取り出すわけにも行かなかったが、分離した穢れの一部は、グリーフシードの胚状態と言うべきか… 兎に角、そこのグリーフシード1ダースと全く同じ魔力で作られてる事が解った。 どれもこれも最近出来たらしい事もな」
トーリスは円卓を叩き付けた。 ティーセットが小さく怯え陶器の悲鳴を上げる。
 「ちょ、ちょっと待ってよ! 俺のソウルジェムからグリーフシードなんて産まれてないし、先週仲間がジェムを綺麗にしてくれたし」
 「浄化は実際に見た?」
イオンは問う。 図書室で魔女に遭遇した後、トーリスが気付いた時には… 浄化? そんなものは見ていない。 あの時はただジェムを綺麗にした、とローデリヒが言っていたに過ぎない。 そもそも、グリーフシードをどう使えば、ソウルジェムの濁りを浄化できるのか? トーリスはそもそも知らなかった。 耳にしたから、ソウルジェムの浄化の方法を知っているような気になっていたに過ぎないのだ。 見聞きなど何も。
 アーサーは右目尻を瞑り。 イオンは豆鉄砲を食らった様に。 ハルドルは目を細め。部員達は察した。