魔法少年とーりす☆マギカ 第七話
ときわ町高級住宅街、更に外れの小高い丘の上に立つカークランド邸。 一世紀前に海運業で一財を成し、ときわ町随一の名家として名を馳せていた、カークランド一族の財産の一つに過ぎなかったマナーハウス。
祖父の時代で戦災と多大なミスによって、血脈と財産の多くが失われ、前当主であったアーサーの父が数年前に夭折した今では、このマナーハウスと一帯の土地のみが、一族唯一の財産となってしまった。 母も後を追う様に急死し、後見人の執事の助けもありアーサーは当主を継いだが、中学生の身では高額な税金諸々など稼げるはずもなく、遺された思い出深い品々を売り、貯蓄を切り崩しながら、屋敷住まいの貧しき若当主は如何にか、その日その日を生きている。
しかし今朝は違った。 強調された『開けるな』の張り紙が貼られたアーサーの私室。 扉越しにも混乱が僅かに漏れてきていた。
「ああ、ええと、つまり、ソウルジェムが、砕ける事無く、今までに幾つも、グリーフシードを産んでいた… だって!?」
イオンの纏まりのつかぬ発声。 うっかり倒されたティーカップから透き通る真紅が零れ広がっていく。
口から零れ落ちたポテトチップス半枚にも気付かずハルドルはマザーコンピューターから伸びる出力ケーブルをモニターに接続した。 彼が魔術的解析、設計に用いるタワー型の未来型コンピューターは挙動の軽快さを重視された設計思想をブーストする為に、ユーザーインターフェースを使ったアプリケーションは一つとしてインストールされていないのだ。
本来はハルドル以外の者に解りやすくプログラム内容などを図式化し、映像を再生する為の専用モニター。 魔術部が調査員として雇ったバッシュの手によって、ときわ町各所、コピー魔女が頻繁に現れる地点に設置された、魔法的光学迷彩に守られた隠しカメラ。 彼の遺した最期の記録の内一つは、藍の魔法少年がコマンドを打ち込みある一点を拡大し延々とループ再生を続けている。
「魔法の跡ねし、編集の跡ねし! 間違いのぐ本物だ!(魔法の跡なし、編集の跡なし! 間違いなく本物だ!)」
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第七話 作家名:靴ベラジカ