夏祭り
去年の夏祭りはまだ私は
先生のことが好きで、
馬村の気持ちに応えられないって
言ってたっけ。
あの時も今も、
馬村の手は優しく包むようで
何も変わらないのが
すずめは嬉しかった。
すずめはギュッと
馬村の手を握り返した。
「?どうかしたのか?」
自分の変化にすぐ気づいてくれる。
「ううん。」
たぶん、浴衣も、
馬村が言ってくれた通り、
ちゃんと気付いてくれてたんだろう。
さっきまで蒸し暑くて
不快だったのに、
ポカポカと気持ちの良い
温かさで包まれるような
気分になった。
「あっいい匂い!イカ焼き!
馬村、これ食べようよ。」
「いきなりイカいくのかよ。」
「だって美味しいものは
先に食べとかないと。」
イカ焼きのお店は
すごい行列だった。
「すげえな。」
「去年より人が多い気がするね。」
「これはぐれたら
シャレになんねーな。」
イカを買って、人の多さにもみくちゃになりながら
花火が見えそうなところに行く。
「やっぱりイカはタレより塩だよね。」
「そうか?」
「あ...」
ヒュルルルルル、ドーン!!
と一発目の花火があがった。