夏祭り
「立てるか?」
「もう大丈夫。」
手をつないだまま帰っていると、
「あーっすずめちゃん!」
と聞いたことのある声がした。
振り返ると、ツルとカメ、
犬飼と猿丸が歩いていた。
「ウチら、偶然会っちゃってさー。」
カメと猿丸はあぶれ者同士で
お祭りに来ていたらしい。
「もう帰るの?」
「人が多くて。
イカ焼きしか買えなかったよ。」
すずめが残念そうに言うと、
「あっ、はしまきとか、人形焼とか
買ってるよ!いる?」
カメに言われて、
「いる!いる!」と
すずめは一気に元気になった。
「なんだよ、腹が減ってただけかよ。」
馬村は二人きりじゃなくなって、
残念そうだったが、
すずめはみんなと会えて
嬉しそうだった。
「まぁ、いっか。」
「あれあれあれ、馬村、
与謝野と二人じゃなくて
俺ら邪魔だなーとか思ってる?」
「...思ってるわ。」
「マジかよ。悪かったな。
っていうか、偶然なんだけどな。」
彼女のいない猿丸は、
邪魔ができてちょっと嬉しそうだ。
「ま、これでも食って機嫌直せよ。」
猿丸からたこ焼きをもらって
「ん。」
と微妙に嬉しそうな馬村だった。
「冷めてるな。」
「買ってだいぶ経ったしなー。」
駅の近くになって、
「じゃあ、俺たちこっちだから。」
と犬飼が言って四人と別れ、
また二人になった。