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靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第八話

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 不安定な休符を挟むタイピング音。 高級な皿にティーカップを戻す。 ティータイムは終わった。 熱気を帯びている筈の陽光は程良く利いた空調に阻まれ、今も懸命に情報の濁流を解析、翻訳している魔術部室と部員達の姿に、無感情に光と影を色濃く着色していく。
 「俺はあの時… 気になって菊達の後をつけていた。 魔女化した菊が倒されて、気付いた時には既にフェリクスは契約済みで」
 左手で顔を覆い、草色の魔法少年は歯を食い縛った。
 「最後のメンバーは生きちゃいたが、後遺症で十字軍を去って行った。 その後、まるで結成メンバーを失った十字軍の後釜に収まるように、魔法少年になったのが」
 「…ローデリヒ、だったな」
 ギルべぇは重い腰を上げ、口を開いた。 垂れ下がる巨大な尻尾。 控え目なシャンデリアのLED照明が、弱った妖精の神妙な面持ちをぼんやりと浮かび上がらせる。
 「まだ【第一次魔法少年十字軍】が健在だった頃、魔女の口づけを受けて投身自殺をしようとしていた所を、あいつはメンバーの連中に救われた。 それ以来、軍のグループ遊びにはしょっちゅう付き会ってたしよ。 年がら年中、学校でも近所でも虐められてたあいつだぜ。 十字軍とつるむ方がよっぽど居心地が良いだろうな」
 「魔女の口づけ?」
 初めて耳にする単語。 トーリスの疑問に、雑巾を洗面所で揉み洗いながらイオンは補足を入れる。 少々床そのものの汚れが混じった紅茶汚れは尾を引き排水溝へ吸い込まれていく。
 「魔女に狙われた人に付けられる印サ。 魔女の口づけを受けた人は自殺、交通事故、様は自滅行為に走るようになるけど、ターゲットが死ぬ前に魔女を倒せば呪いは消える」
 応接用のソファーに腰を投げ落としながら、短い銀髪を掻き毟り、銀の妖精は項垂れた。
 「あいつにとって、元の十字軍は命の恩人だった。 元のチームを【第一次】って呼んで敬意を表し、後継のチームには【魔法少年十字軍】なんて名付ける位にな。 だがよ、仲間の力を信じ背中を預ける。 そんな器の大きさは… 菊含め元のメンバーにはあっただろうが、坊ちゃんには足りなかった。 グリーフシードは役得位の意味しかなかった魔女退治ボランティアも、あれよあれよとグリーフシードコレクターに早変わりだぜ」
 「…魔女を倒す為にグリーフシードを探すんじゃねぇ。 グリーフシードを集める為に魔女を倒す。 そういうチームになったんだろうよ」
 アーサーは鼻で嗤い吐き捨てた。 沈黙。 不定期に足を休めるタイピング。 滑車付きのオフィスチェアがくるりと円卓の方を向く。