魔法少年とーりす☆マギカ 第九話「ウラル・オパール」
高級住宅のリビング。 家主の妻であった、墨染めのように全身が黒く焦げ切った中年女性は倒れ込み、二度と動かなくなった。 高級な空調システムの機械的な送風音と、蝉の鳴き声が混ざり合い、悪魔の愉快な囁き染みて、格調高い部屋に僅かな残響を残す。
「友達になれなくて寂しいなあ。 ばいばい、ローデリヒくん」
テーブルの上、砕け散ったソウルジェム。 捩じ切られたように転がる、真鍮色をした十六分休符のシンボル。
目を見開いたローデリヒの遺体の目元に、イヴァンは大きな手を伸ばし、強引に瞼を閉じた。 傍の野暮ったい筆跡のメモにソプラニスタは目をやる。 ローデリヒの筆跡ではない。 だが、見慣れた筆跡。
「お姉ちゃん。 もうすぐ、もうすぐだよ。 これから、会いに行くからね」
ローデリヒ邸の玄関を解錠。 ようこそ、新たな世界。 人の姿をした悪魔は、ときわ町へと足を踏み入れた。
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第九話「ウラル・オパール」 作家名:靴ベラジカ