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靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第九話「ウラル・オパール」

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 あすなろ市に差し掛かる、ときわ町外れの廃アパート。 赤黒は慎重に着陸し、抱えていた茶髪の少年も後に続いた。 ここに引退した、最後の第一次魔法少年十字軍のメンバー、ルートヴィッヒが毎日の様に頻繁に花を捧げに来ると言う。 焦燥に駆られる神経。 トーリスは漸く、機会の無かった問いを赤眼の魔法少年に投げた。
 「結局、目的はなんなの。 お前達魔術部の目的って」
 赤黒の液状がうねり、柘榴色のソウルジェムに収束し消えていく。 イオンは答えた。
 「犠牲無しに、ソウルジェムを浄化できるシステムの確立」
 「立ち上げたのはアーサー。 魔女化して仲間達が死ぬのを何度も見て、おいら達も散々な思いしてきたし。 二つ返事で仲間になった」
 昼時の廃アパートに近付きたがる者等そうそう居る筈もない。 少年達は辺りを見回しながら続ける。 辺りの人ごみは疎らで、数少ない一般人もそそくさと傍の飲食店や喫茶店に向かっている最中であった。
 「近場の怪しい変死事件の現場に行ったりして、地道に魔法少女の痕跡を辿って。 回収出来た献体をアーサーが解析し、結果を纏めて、ハルドルがそれを元に設計、開発して実物を作ったり、何が起きたのか、事件が魔女絡みだったのかどうか検証したりして。 おいらはそういうの、さっぱりだから。 手伝いを雇うまでは、試作品の実践テストをしたり、アシで探し回る役が殆どだったけど」
 時折、乗用車の走行音が侘しく去る辺鄙な脇道。 スマートフォンを弄りながら、ストレートボブの少年は首を傾け辺りの人相を確認して回る。
 「フェリクスの事はよく知らないし、ローデリヒって奴の事はもっと知らない。 でも、数少ない仲間を何度も痛めつけて、グリーフシードを確保する。 そういうやり方には正直、むかついてたんだよね」
 トーリスのスマートフォンが着信音を発する。 送信元はイオンだが本文は空メール。 しかし、容量を見るに結構な内容量のテキストファイルが添付されていた。
 「バッシュの携帯に残ってたやつのコピー。 プライパシ―とかあれかなって思ったけど、あいつには世話になったし、遺体が見つからなくて、お葬式もまだみたいだから… 形見分け代わり。 良かったら取っといてよ」
 遺体が見つからない? 一週間前のあの時、ローデリヒとアントーニョは家族の元へ送り届けたのではなかったのか。 些細で素朴な疑問を後回しに、トーリスはテキストファイルをコピーした。 前を見ると、廃アパート脇の路地裏に向かう、大きな花束を抱えた金髪の男。 不意に目が行った。 トーリスは後を追う。 気付いたイオンも慌てて追いかける。
 黒く焦げた一室がそのまま放置されたアパートの一角。 他の部屋に洗濯物などは何一つない。 自らが都心部にいるとは思えないほど、ぞっとする静寂。 半端に開いた、汚らしく焦げた舗装の隅に花束を掲げる男。 背後から見ても威圧感のある体躯。 近くで見れば、その男… いやその青年は、近場の高校の制服姿なのだと解った。 左腕を覆い隠す長い手袋。 気配に気づき、花束を捧げた高校生―
 ルートヴィッヒは振り向いた。