続•香り
朝起きて、制服を着ると、
ふわっと馬村と同じ
石けんの匂いがした。
「ふふ。」
どうせ学校に行けば会えるけど、
同じ香りをまとうと思うと
少しテンションがあがる。
「おはよー。ゆゆかちゃん。」
学校に着いて、
そう言って気持ちよく
ゆゆかに挨拶をすると、
「アンタ、コロンかなんかした?」
察しのいいゆゆかは、
すぐ香りを指摘した。
「いい香りの石けんを
制服の間に
ぶら下げてみたんだけど。」
馬村と同じ香りということは
伏せておいた。
ゆゆかもそこまで馬村に
近づいたことがないので
気づかないようだ。
「ふーん。アンタにしては
気の利いたことするわね。」
「どこの石けんか教えなさいよ。」
いい香りなのでゆゆかも
気にいってしまったようだ。
「例えゆゆかちゃんでも
これだけは教えられないんだよ。」
口の前でバツを作るすずめに、
「は?アンタ、この私に
隠し事するなんていい度胸ね。」
そうジリジリとゆゆかは
すずめに近寄っていく。
「言わないと宿題写させないわよ?」
「ええっ!」
宿題を見せないと言われると
大ピンチである。
すずめがゆゆかの脅しに
屈しそうになっていると、
「あ、馬村。」
「よぉ。」とぶっきらぼうに
馬村がゆゆかとすずめの横を通った。
するとふわっと
すずめの石けんの香りと
同じ香りが馬村からしたのに
ゆゆかが気がついた。
馬村はおかまいなしに
そのまま教室に入っていく。
「……」
ゆゆかは黙って
すずめの顔を見て、
「ああ、そういうこと。」
と呟いた。
「えっ。」
「やーらしー。」
「何で?何が??」
すずめは何を言われてるかわからない。
「2人で同じ石けんの香りを
漂わすなんてね。」
「えっそれは誤解だよ!!」
すずめはゆゆかの
思いがけない言葉に
慌てふためく。
「だってそうじゃない?
フツーそういう想像するわよ?」
「ええええええっ!」
「ま、そういうことならねー。
どこの石けんとか聞かないけど。」
そう意地悪く言って、
ゆゆかはすずめに背中を向け
教室に向かう。
「ゆ、ゆゆかちゃーん。」
「しーらない。」
ゆゆかはわかって言ってるのだが、
そんな誤解を受けることとは
すずめは思いもせず、焦った。