機動戦士ガンダムRSD 第3話 予兆の砲火
「撤収するぞ、リー」
その命令にガーティー・ルーは、機関を最大にして撤退を図った。
※
それは、リーンホースJr.でも確認できた。
「ボギーワンおよびボギーツーが離脱します。
イエロー71アルファ」
ミハイル副艦長が敵の逃亡方向を報告した。
「ガンダムサイガーと改ガイヤス・ギヤは?」
マーカー艦長は、2機の帰艦状況を質問した。
「帰投、収容中です」
エルヴィン中尉が2機の状況を答えた。
「急がせろ。
このまま一気にボギーワンおよびボギーツーを叩く。
進路イエローアルファ」
マーカー艦長は、追撃するように命令した。
※
侵入した敵ガンダムと交戦したユーピテルツヴァイのパイロットの彼氏が見守る中彼女は、けがの手当てを受けていた。
彼氏は、外の状況が気になっていた。
※
敵艦隊は、主砲など撃っていたがガーティー・ルーとミネルバには命中しなかった。
「大佐」
ネオ大佐がブリッジに入ってきた。
「すまない、遊びすぎたな」
ネオ大佐は、調子に乗ったことを詫びた。
「敵艦隊は、尚も接近。
ブルー0、距離110」
オペレーターが位置と本艦との距離を報告した。
「かなり足の速い艦隊のようです。
厄介ですぞ」
イアン艦長は、長期戦になることを覚悟していた。
※
リーンホースJr.は、ミサイルを発射した。
※
それは、ガーティー・ルーでも確認できた。
「ミサイル接近」
オペレーターが大声で報告した。
「取り舵。
かわせ」
ミサイルは、イーゲルシュテルンで迎撃できた。
しかしその衝撃がブリッジを襲った。
「両舷の推進剤予備タンクを分離後爆破。
アームごとでいい。
鼻っ面に喰らわせてやれ。
同時に上げ舵35、取り舵10、機関最大」
ネオ大佐の気迫ある命令にイワン艦長は、押されていた。
ガーティー・ルーは、推進剤予備タンクの分離作業準備に入った。
※
リーンホースJr.には、ガンダムサイガー改とガイヤス・ギヤが着艦しサオトメがいち早く外に出ていた。
アンディー大尉もそれに続くように外に出た。
「アンディー大尉」
「あの、大丈夫ですか?」
整備兵たちは、元気のないアンディー大尉を心配した。
アンディー大尉は、マン・マシーンデッキを浮遊しながら敵ガンダムを討てなかったことを悔しがった。
※
ガーティー・ルーは、推進剤予備タンクを分離した。
※
それは、リーンホースJr.でも確認できた。
「ボギーワンが船体の一部を分離」
ヘルマン中尉が報告した。
α艦隊の攻撃目標は、瞬時に分離した船体に変わった。
しかし命中できなかった。
「面舵10、機関最大」
マーカー艦長は、避けるように命令したが遅く分離した船体は近くで爆発した。
その衝撃は、リーンホースJr.を襲った。
艦内の人々は、突然の大揺れに少々動揺した。
「ブリッジ、どうした?」
サオトメは、マン・マシーンデッキから艦内電話でブリッジに何があったのか聞いたが電話は一時的に不通になっていた。
アンディー大尉は、今一度出撃しようとガイヤス・ギヤに乗り込もうとした。
「各ステーション、状況を報告せよ」
オペレーターが艦内放送で被害状況を報告するように通達した。
「ヘルマン、敵艦の位置は?」
マーカー艦長がヘルマン中尉に質問した。
「待って下さい。
まだ索敵中です」
ヘルマン中尉は、待ってくれるようにお願いした。
「CIWS起動、アンチビーム爆雷発射。
次は、撃って来るぞ」
マーカー艦長は、敵攻撃を予想して身構えた。
「見つけました。
レッド88、マーク6チャーリー、距離500」
ヘルマン中尉の報告にマーカー艦長は、驚いた。
「逃げたのか?」
ミハイル副艦長は、敵が何をしたのか言った。
その時ブリッジにサオトメが入ってきた。
それにサイジョウ元帥も気づきサオトメに敬礼した。
サオトメもサイジョウ元帥に気付き敬礼した。
「やってくれるぜ、こんな手で逃げようとは」
マーカー艦長は、こんなでたらめな手で逃げようとする敵の指揮官に半分あきれていた。
「だいぶ手強い部隊のようだな」
サイジョウ元帥は、敵の強さに覚悟した。
「ですから尚の事このまま逃がすわけには、いきません。
あんな連中を逃がしたらまたどれほどの悲しみが生まれるかわかりません」
マーカー艦長は、最悪な場合を想定した。
「ああ」
それには、サイジョウ元帥も異論はなかった。
「私は、この艦隊はこのままあれを追うべきと思います。
サイジョウ元帥の御判断は?」
マーカー艦長の質問に皆の視線がサイジョウ元帥に集まった。
「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。
私だってこの火種を放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか。
それを考えるのは、怖い。
あの部隊の全滅は、最優先責務だよ」
サイジョウ元帥は、追撃の許可を出した。
「ありがとうございます。
トレースは?」
マーカー艦長は、ヘルマン中尉に追撃可能かどうか質問した。
「まだ追えます」
ヘルマン中尉は、士気を高くして答えた。
「ではα艦隊は、此より更なるボギーワンおよびボギーツーの追撃戦を開始する。
進路イエローアルファ、機関最大」
マーカー艦長は、ボギーワンおよびボギーツーの追撃のための航路を指定した。
「進路イエローアルファ、機関最大」
航海長のハーマン・スネル中佐が復唱した。
するとα艦隊は、機関を最大にしてボギーワンおよびボギーツーを追撃した。
「全艦に通達する。
本艦は、此より更なるボギーワンおよびボギーツーの追撃戦を開始する。
突然の状況から思いもかけぬ戦闘となるがこれは、非常に重大な任務である」
ミハイル副艦長が艦内放送で皆に報告した。
皆は、強襲されたことがとても悔しかったのか敵討ちが取れると喜んだ。
「各員、日頃の訓練の成果を存分に発揮できるよう努めよ」
ミハイル副艦長は、最後に皆を激励した。
「ブリッジ遮蔽解除。
状況発生まで状態を第二戦闘配備に移行」
マーカー艦長は、第二戦闘配備に移行するように命令した。
「ブリッジ遮蔽解除」
「第二戦闘配備に移行」
ブリッジが上昇した。
「サイジョウ元帥も少し隊長室でお休み下さい。
リーンホースJr.は、世界一最速の軍艦ですが艦隊行動では制限があります。
さらに敵もかなりの高速艦です。
すぐにどうということは、ないでしょう」
マーカー艦長は、サイジョウ元帥に少し休むように具申した。
このリーンホースJr.は、ミノフスキードライブを装備した軍艦であり理論上亜光速まで加速することが可能である。
しかし他の艦には、搭載されていない艦もあり艦隊行動を行う場合は大きな制限を受ける。
※
テリー大尉は、自室でジーン中尉にキスして良いよと言われたため焦っていた。
「ジーン」
しかもジーン中尉は、目をつむり微動だにしなかった。
(本当にいいのか?
とはいえ女性にここまで言われて黙る男がいるか)
しかしテリー大尉の中では、すべきか止めるべきかの葛藤が続いていた。
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第3話 予兆の砲火 作家名:久世秀一