機動戦士ガンダムRSD 第3話 予兆の砲火
「じゃあ、いくぞ」
そしてテリー大尉は、することに決めジーン中尉の顔に近づいた。
するとジーン中尉は、突然笑い出した。
それにテリー大尉は、ひどく驚いた。
「『いくぞ』だって、かっこ悪い」
ジーン中尉は、笑いながらそんなことを言った。
テリー大尉は、一世一代の大決心をしたのにそれを踏みにじられ怒った。
「今は、まだ第二戦闘配備ですよ」
ジーン中尉は、今の状態を言った。
「その言葉をそっくりそのままお前にかえす」
その言葉は、キスして良いよと誘ったジーン中尉に向けられるべきだとテリー大尉は考えた。
「それは、すみませんでした。
でも大尉も男の人なんなんだなと改めて感じました」
ジーン中尉は、しみじみ感じた事を言った。
「それは、バカにしているのか」
テリー大尉は、バカにされたみたいに感じむっとした。
「してないです。
それでは」
そういうとジーン中尉は、テリー大尉の制止を振り切り部屋を出て行った。
テリー大尉は、完全に遊ばれていると感じた。
※
ガーティー・ルーのモビルスーツデッキでは、ガンダムの整備が行われていた。
リラクゼーションルームでは、エクステンデッドの調整が行われていた。
その調整をネオ大佐は、静かに見守っていた。
ネオ大佐は、リラクゼーションルームを出るとブリッジに上がった。
「どうやら成功というところですかな?」
イアン艦長は、ネオ大佐に質問した。
「ポイントBまでの時間は?」
ネオ大佐は、安全圏ポイント到着の予想時間を聞いた。
「2時間ほどです」
オペレーターが答えた。
「まだ追撃があるとお考えですか?」
イアン艦長は、ネオ大佐に追撃があるかどうか質問した。
「判らないね。
判らないからそう考えて予定通りの針路をとる。
予測は、常に悪い方へしておくもんだろう?
特に戦場では」
ネオ大佐は、戦場での心得を説いた。
それにイアン艦長も納得した。
「彼等の最適化は?」
イアン艦長は、エクステンデッドの調整状況を質問した。
「概ね問題は、ないようだ。
みんな気持ち良さ気に眠っているよ。
ただアウルがステラにブロックワードを使ってしまったようでね。
それがちょっと厄介ということだが」
ネオ大佐がイアン艦長にエクステンデッドの調整状況を答えた。
「何かあるたびゆりかごに戻さねばならぬパイロットなどラボは、本気で使えると思っているんでしょうかね?」
イアン艦長は、維持設備等を考えてエクステンデッドの有効性に懐疑的だった。
「それでも前のよりは、だいぶましだろう?
こっちの言うことや仕事をちゃんと理解してやれるだけ」
ネオ大佐は、ブーステッドマンと比較してその有効性を説明した。
イアン艦長は、生体CPUそのものに懐疑的であるため生体CPUを配備してくるラボに不信感を持っていた。
「仕方ないさ。
今は、まだ何もかもが試作段階みたいなもんさ。
艦もモビルスーツもパイロットも。
世界もな」
ネオ大佐は、そんなイアン艦長の心を読んでか世界の状況を説明した。
「ええ、解っています」
それは、イアン艦長も理解していた。
「やがて全てが本当に始まる日が来る。
我等の名の下にね」
ネオ大佐は、いつかコーディネイターが統べる世界がやってくると信じていた。
※
リーンホースJr.のマン・マシーンデッキではガンダムサイガー改、ガンダムサイガーMk-Ⅱとガイヤス・ギヤの調整が行われていた。
「しかしまだ信じられない。
コロニー本国が強襲されたなんて嘘みたいだ」
整備兵の1人が愚痴った。
「ああ」
話しかけられた方は、淡々と作業を続けていた。
「なんでこんなことになったんだろう?」
整備兵は、作業をやめどうしてこうなったのか経緯が知りたかった。
そこにサオトメが飲み物を呑みながら来た。
「でもまさかこれでこのまままた戦争になっちゃったりはしないよね?」
サオトメは、話をしている整備兵やちゃんと仕事をしている整備兵を横目に通り過ぎた。
そして先の戦闘を思い出していた。
あの戦いは、ただのちょっかいを出すでは済まさず本気で自分たちをつぶしに来たと戦ったものだけが感じ取れた。
※
アンディー大尉は、キリー中尉と廊下で世間話をしていると不意にいたずら心が芽生えた。
「サオトメ副隊長」
アンディー大尉は、サオトメがいないにも関わらずそういうと敬礼した。
「居ないよ。
見間違いじゃないの?」
キリー中尉も振り返ったがそこには、サオトメはいなかった。
アンディー大尉は、チャンスと言わんばかりにキリー中尉の頬を人差し指で突っついた。
キリー中尉は、驚きの声をあげた。
「ちょっとやめてよ」
キリー中尉は、止めるように言った。
「ごめん」
アンディー大尉は、爆笑しながら謝ったが心は無論こもってない。
「くそ、悔しい」
キリー中尉は、本気で悔しがっていた。
「笑わせてくれてどうもありがとう」
アンディー大尉は、まだ笑いながらそんなことを言った。
「絶対復讐してやる」
キリー中尉は、心に固く誓った。
キリー中尉の決心は、固くまさに有言実行であった。
「ごめん、許して」
アンディー大尉は、先と打って変わって真剣に謝った。
このままでは、何をされるかわからなかったからだ。
「じゃあ、コピ・ルアクをおごってくれたら許してあげる」
キリー中尉は、そんなアンディー大尉の姿が面白かったのか笑いながら条件を言った。
「高いいたずらだな」
アンディー大尉は、驚いた。
コピ・ルアクは、ジャコウネコの糞から採られる未消化のコーヒー豆のことである。
西暦時代から高い人気があり無論リーンホースJr.に備えられた自販機にもあるがやはり最も高い飲み物である。
そのため士官たちとておいそれと呑めるものでは、なかった。
「乙女心はそれほど深く傷ついたの」
キリー中尉は、むっとしながら言った。
「以後気を付けます」
アンディー大尉は、高い出費にうなだれていた。
「冗談だよ。
ココアでいいよ」
キリー中尉は、笑いながら訂正した。
「天使よ、感謝します」
アンディー大尉は、心の底から感謝していた。
(しかしココアで機嫌が直るとは)
アンディー大尉は、乙女心は理解不能だと改めて感じた。
※
リーンホースJr.のブリッジでは、マーカー艦長が艦長室に座りボギーワンとボギーツーの捕捉報告を待っていた。
ミハイル副艦長は、そんな艦長を心配し振り返った。
※
ガーティー・ルーのブリッジでは、ネオ大佐が交戦したガンダムサイガーとガイヤス・ギヤの戦闘データを解析していた。
※
リラクゼーションルームでは、ブロックワードを言われたステラ少尉の最適化が完了した。
※
テリー大尉は、先の仕返しをしようとジーン中尉の部屋を尋ねた。
自然を装い話をしようとしたがなぜかジーン中尉は、テリー大尉の膝の上に座った。
「お前は、何をしてるんだ?」
テリー大尉は、ジーン中尉に焦りながら尋ねた。
「座っただけじゃない」
ジーン中尉は、尋ねられたことが不思議そうに答えた。
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第3話 予兆の砲火 作家名:久世秀一